長く短い祭〜おれたちの人生
林檎熱が再発したおれ。
粛々と確かな仕事をするウィルス。
とうわけで、残り数ヶ月ある2017年の使い道は決まった。
好き放題、彼女の楽曲とMVを味わう。
観ずにいた時間を悔いながら、2年遅れで「長く短い祭」を体験した。
2015年コカコーラCMソングであり、PVが話題になったシングル曲。
ちなみに相棒の曲は、怪物「神様、仏様」。
ああ。「長く短い祭」。なんという……。
彼女のダンナのPVは、スゴいクオリティ。
ダンナとは、ユニクロなどのCMを手がける売れっ子映像クリエイター児玉さん。ご主人のことを彼女はあるときケダマとお呼びになっていたが、それは関係ない。
多くのかたの解釈どおり、あのムービーは不倫のはての物語だと思う。
けれど、いちばん重要な場面を指摘している文章を、WEB上に探し出せない。
毒を飲み込んで崩れる最期。
修羅場近くでは男のほうから死ぬものだけれど、女も覚悟している。
不倫の愛の終焉は、みな最初から予期している。
自覚しようとしまいと。
そうでしょう? 経験したみなさま。
曲そのものについては。
サウンドの素晴らしさに、完膚なきまで打ちのめされる。
メロディを生かしつつ共に生きるコードワーク。鍵盤は生き生きときざむ。
独白のような興味深い詩と、それにふさわしい構成。
シンプルでシブい楽器たち。セピア色のブラス。枯れているのに確かなベース。
スタイリッシュなリズム。最小限の三連のバスドラとブラス。
グッとくる。圧倒的。
浮雲さんの存在と、オートチューンをかけた林檎の声に……。
おれは事変解散時の「sa_i_ta」を思い起こした。
否応なしに、事変や彼女の過去が去来する。
走馬灯とは一晩の営みであり、スタジオでありライブであり。
いままでのすべて。
つまり彼女の、また事変のメンバーの、あるいは彼女に関わったすべてのひとの、かつて生きた様。
命を燃やすにおいを放って、そののち全方位に駆けて散る仲間。
別離と邂逅をくり返すわたしたち。さようなら、はじめまして。
彼女はふり返る。場違いな自分もよくぞここまで来たものだと。
いまや彼女のなかには行き場がないほど創造の泉が湧いている。
そう。
花火とは、音楽。
天上の世界と地上の世俗を結ぶ一瞬のきらめき。
彼女はそれをはっきり見ることができ、聴くことができ、からだ全部で感じることができ、創ることができる才能を授かって、おれたちの前に現れた。
同じ刹那に生きているおれたちは、宇宙の歴史のなかで巡って来たこの幸運を、いまよろこび、楽しみたい。
祭のように。
けれど、覚悟しなければ。
「ほんのかりそめがいい」
別れは訪れる。
曲が終わるように。
ひとの一生のように。
長く短い祭。
おれたちの愛おしい林檎の、感極まる最後のシャウトこそ、花火のようなおれたちの人生。
iPhoneより送信
追加更新:
思い立って、この曲の個人的で勝手な意訳をアップいたします。
わたしにとっての「長く短い祭」は、こんな曲です。
カクヨムで活躍されているクリエイターのみなさんには、林檎さんはわたしたちのことを歌っているのだと、分かっていただけるはずです。
……………………………
長く短い祭
花火って音楽のようね
一回こっきり、同じのは二度とない
ひとの一生みたいね
馴染めない業界に身をまかせて
なんだかんだでもう十五年
よくやってきたと思う
けど、時間が経つのはほんと早いね
気がつくと、みんなもう若くないのよ
さあ今日もやってやろうよ、あたしたちぜんぶが主役だよ
それぞれの個性でスタイルもさまざま
自分が信じることするガンコなヤツら
それでいいのよ、あたしたちは
辛いときも、悲しいときも
みんなの中を右往左往
なんとかやってきたなあ
ずっと変わらないって違うと思う
その時のイチバンってあるよね
今が最高なのよ、さあ盛り上がってきたぞ
みんな勝手なことするしょうがないヤツら
怖いくらい頼もしい
そうよ、ビビってちゃダメ
ちょっともう、このホテリはなに?
あたしだって、まだまだやってやるわ
すごく油がノッてるんだから
ちょうどステキな曲が浮かんだところなの
思い出すのよね、あの時のこと
しっかり刻み込むわよ、この音楽に
ああもう、このエネルギーはなに?
あたしだって、まだまだやってやるわよ
こう見えてもノリにノッてるんだから
PS:special thanks to 糸崎かや さま
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます