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途中でに会う村人にすっごい顔された。あの二度見は素晴らしかった。理想的な二度見だ。
そりゃ妖精つれて歩いてる子供とか珍しいだろうしね?多分だけど、使役するのに結構魔力持ってかれた感じだから格?的なのが高いんだと思う。
一旦歌うことやめて完全に気配消し去って走って家に帰ったさ。シェリーだけ見えちゃってる感じなのかな?って思ったけど元々ちっちゃいし、手で隠すようにしてたから全然問題なかった。
やっぱり失敗したわ。これ家で大騒ぎになるぞ。どやって誤魔化すべきか。
家の周りでちょっと思考を巡らせる。
「マスター?どうしたんですか?」
シェリーが顔を覗いてくる。かわいい。
「いや、ちょっとまずいことにな。ぶっちゃけると俺能力隠してるんだわ。」
「マスターがですか?マスターは有名な魔物使いじゃないんですか?」
「正確には魔物使い見習いだな、他にもめっちゃあるけど。」
シェリーが驚いた顔を見せて、ぶつぶつと見習いに使役された妖精ってどうなの?私って妖精失格なの?ってつぶやいてる。
「すまんな、俺ちょっと規格外だから気にしないでいいよ。」
「確かに私の状態を見てもちょっとおかしいんですけど…。納得しました。」
我に返ったシェリーが頷く。
「でも、どうして隠しているんですか?何かまずいことでもあるんですか?」
シェリーの一言に確かに、と思った。
別に隠しとく必要ないんじゃないかと、両親は自分のこと詩人見習いだと思ってるっぽいけど別に魔物使いでもいいんではないか?
さすがに大魔法使いとかはブッ倒れて泡吹きそうだが。
「シェリー、一応聞いとくけど妖精って使役しづらいのか?」
「それは、自然現象ですからね。人間に嵐が操れるかってくらいですね。」
シェリーさん頭よくなってないですか?会ったときわかんないって言ってたじゃないですか。俺の能力のおかげか。
妖精が自然現象ってことは置いといて。
「そりゃ、困難だな。少なくとも見習いじゃあ無理だろうし、んー。」
「普通は、魔物使いの中でも上位に位置する人しか無理ですよ…。どれだけ規格外なんですか…。」
「内緒な。…よし、こうしようか。」
「どうするんですか?」
「お友達になった作戦だ!」
シェリーの痛い人を見るような目が痛い。
ちょっとシェリーさん変わりすぎじゃない?最初に比べて遠慮がなくなったというか慣れたというか。俺の能力のせいか。
「その目はつらい。」
「ごめんなさいです。具体的にどうするんですか?」
「使役は結んでない。シェリーが飛んで散歩していたら、たまたま歌声が聞こえてきて、面白そうだったからちょっと会話してみたら案の定面白かったのでお友達になってついて来ちゃいました。」
「無理ありませんか?大体名前つけてもらっちゃってますし…。」
「そこは俺がどうにかする、大妖精だし、名前持ちとか前のマスターに捨てられたとかさ。」
「前者はともかく、後者はすっごく嫌なんですけど…。」
「俺だって必死なんだよ!」
急に大声出しちゃったからかまだ庭で魔法の講義をしていたらしい、お母さんがこちらに気づく気配がした。
「気づかれた。じゃあ、そういうことで頼んだぞ。あと俺猫かぶってるからよろしく。」
「わかりました。マスターの好きにしてください。」
テンション下がった声でシェリーが呟く。すまんな、これもマスターのためだと思って我慢してくれ。
「リー?帰ってきたの?」
どうでもいいけど俺をみんなリーって呼んでる。愛称みたいなもんだ。
「ママただいまー!見て見て!びっくりするよ!」
シェリーの顔が固まる。
(猫かぶってるって言っただろ?なるべく話を合わせてくれ。)
さっそく念喋を使いシェリーに話しかける。
シェリーはびっくりした顔をするが。まぁ、マスターだし?みたいな顔に最終的になった。
「リー、お帰りー!楽しいことでもあったの?」
おねえちゃんもこちらに向かってきてる。
「ふふーん。じゃーん!妖精さん拾った!!」
なるべく無邪気そうな顔でそして無邪気そうな声で手を差し出しそう高らかに宣言する。
「…はい?」
「妖精さん!どこどこ?」
お母さんは目を白黒させながら、おねえちゃんは目を輝かせながら俺の手の中を見ている。
「初めまして、私は大妖精のシェリーと申します。」
俺の手の中でシェリーがちょこんとおじぎをしながらそう言う。
「うわー!可愛い!お人形さんみたい!」
「…マーディ!どこにいるの!?ちょっとマーディ!!」
おねえちゃんは目を輝かせながら近づいてきて、お母さんは目を白黒させながら遠ざかっていった。
まぁこうなりますよね。
「お歌歌ってたら近くにいて一緒に歌ってくれたんだ!だから友達になった!」
ここが好機と攻める。
「いいなー!私も友達になりたい!」
おねえちゃんがシェリーに手を突き出す。
(俺の姉ちゃんだ、よろしく頼む。)
「いいですよ。よろしくお願いします。」
とシェリーは差し出されたその手をちょこんと掴む。
「わーい!私、ラトニス!ラニって呼んで!」
おっし、おねえちゃん落した。外堀から埋めていくスタイル。息子と娘のダブルアタックなら両親の壁もぶっ壊せるだろう。
「…おいおい、本物か?初めて見たぞ。」
「えぇ、私もよ。まさか生きていて妖精を見られるなんて思ってもみなかったわ。」
どうやら相当珍しいらしい。遅れてすっ飛んできたお父さんも加わった。
これは家族会議の始まりだな。
場所を移して家の中のテーブルにみんな着席する、もちろんミュウも一緒だ。シェリーを見て目をキラキラさせてる。
「…で?」
「秘密の場所で歌ってたら近くにいて一緒に歌ってたの!友達になってって言ったら友達になってくれた!」
子供の特権漠然とした受け答え、最大限に活用させてもらうぜお父さん。
「…んーむ、妖精は楽しいことが好きらしいしな、ありえない話ではないと思うが…。」
「挨拶が遅れてすいません。私は大妖精のシェリーです。今回はマ…、リード君とお友達になってと頼まれたのでお友達になりました。」
おいおい危ないぞ、しかしナイスタイミング。
「シェリーさん…でいいのかしら?」
「シェリーで大丈夫ですよ、奥様。」
「ではシェリー、何故お友達になろうと思ったんですか?」
「リード君があまりにも楽しそうに歌ってたので…つい…。」
「妖精は、基本的には人族に友好的だ。信用できそうだな。」
おいおい、お父さん簡単過ぎませんか?もうちょいひと悶着あると思ったんだが。
「それに妖精に選ばれるなんてすごいことじゃないか!さすが俺の息子だな!」
こっちを見ながら笑顔でそう言うお父さん。あぁなんかそういう逸話みたいなのがあるのか。妖精に選ばれた人族が聖剣携えて魔王たおす的な。
「…確かに、妖精は嘘が嫌いなはずですからね。信用出来ると思います。」
(…すまん、シェリー。)念喋で謝っておく。気にしないでといった感じのシェリー。
「それでですね。私今は放浪の身でして、ちょうどいいのでこの家に置いてもらえませんか?」
「おう、そんなの気にするな!娘達と遊んでくれるなら大歓迎だ!」
豪快なお父様、それを尻目にお母様。
「…そうね、面白そうだしいいわよ!」
こちらも豪の者であったか。そりゃそうだ。俺の両親だもの。
「…着せ替えたい。」
ミュウもどうやら賛成のようだった。むしろちょっと危ないかもしれん。
「やったー!早速あそぼー!」
姉ちゃんももちろん賛成。
「じゃあ、遊んでくるね!」
おねえちゃんとシェリーと共に外に飛び出していく。手の中からシェリーが。
「ありがとうございます!お手伝いしますのでどうかよろしくお願いします!」
と叫んでた。
両親ちょろい、改めてそう思った。
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