俺と僕

えんがわ

第一幕 俺は仕事を始める


 あー、ホンジツハカイセイナリ、快晴なり。あちぃ。じりじりする。陽炎が揺れる。空が青い。容赦ない太陽だ。

 ガキどもが缶蹴りをしている。

「タク君、みーっけ、1、2、3」

 ブランコは鉄の音を響かせ、ジャングルジムからは笑い声が聞こえてくる。水遊びをしている男の子と女の子。そんな木曜日の公園。そこが俺の仕事始めだ。

 透明の四角形の建物に、緑の電話が置かれている。スマホ全盛の中、密やかに生き残っている電話ボックス。そのドアを開けると空気がむっとする。カバンから資料、メガネ屋プリステンの顧客情報を取り出す。そのアイウエオ順で一番目の文字の列を指でなぞる。眉を潜めつつ、電話をかける。

 これから俺の名前は相澤直也、アイザワナオヤだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る