#16

「俺も流石にネックレスと身長だけで、犯人なんて御馬鹿な推測を堂々としないよ。ただ、見れば視るほどボロを出すんだから仕方が無い」


 万治以外のそこに居た人間は皆、田辺を眺めるも特に変哲はなさそうだという表情を浮かべた。


「まぁまぁ、順を追って説明しますか。まず、部長さんは大岡さんを宥めて、俺に握手を求めてきた」


 田辺を見て万治がそう言うと、そうだなと田辺は頷く。


「しかし、伊藤さんの事に対して、礼も謝りの言葉も無い。この時の握手は『闘争・逃走反応』と俺は推測した」


 アヤメは首を傾げている。


「要は生理的な反応の一種。学的な詳細は割愛するが、彼は余裕を見せるパフォーマンスをする、なので『大人びた対応』で握手を求めたんだろう。まっ、その実と言うか内は、幼児的な発想の持ち主、伊藤さんの安否を労う一言までは頭が回っていなかったんだろうね」


 へぇ~とアヤメは呟いた。


「今の防犯カメラやSNSが普及したこの時代に、人を計画的に線路に突き飛ばす、何てリスクが大きい計画を考えるんだ、それだけでも子供じみているのに、余裕を見せるパフォーマンスをすると趣旨の嘘の付き様では、気づかない方がおかしいだろ」


 そう言うと万治は、ニヤリと笑い田辺を一瞥する。

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