#6

 引きつった口角を保ちつつも、万治は質問を続けた。


「バイトは何をしてるの?」


 伊藤は「はい」と小さく相槌をうって答える。


「居酒屋でバイトしています」


「バイトしてる時間帯と一応、場所も教えて貰ってもいい?」


「はい。そんなに長い時間はバイトしてません。学校とサークルが終わって大体、夜の八時、九時から十一時位迄です。あと、土日とか休みの日はランチに入ってます。場所は大学同様、自転車で通える範囲です」


 ふむふむと言うように頷く万次。


「家って実家?」


 アヤメはフッと一息吐いて首を傾げ聞く。


「いえ、1人暮らしです。女学生専用のマンションが大学から一駅先の所にあって、なので節約も兼ねて自転車で通学してます」


「ふ~ん、意外に大変なんだね」


 何処と無く心配そうな表情でアヤメは伊藤を見ていた。


「あ、でも、親からの仕送りも有りますし、奨学金も少し借りてるので贅沢はあまり出来ませんが、趣味なども満喫できるので、そこまで大変じゃ有りませんよ」


 アヤメの表情を察したのであろうか、困った笑顔ながらも彼女は健気に笑って見せた。

 その話を聞いていた万治は首の裏を少し揉んで微細頷く。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る