#5
「別に良いよ、頭下げないで」
万治は深く頭を下げる伊藤に少し苦笑いを浮かべで頭を上げるようお願いした。
「とりあえず、面倒だと思うけど今日の出来事とストーカーに付き纏われてるって思った節を詳しく話してくれる? 刑事さん達に言ったと思うけど、俺らはちょっとしか聞いてないし」
「はい」
「んじゃ、簡潔に質問して行くからそれに答えてくれれば大丈夫だから楽にして。はい、まずは息を吸ってぇ~、吐いてぇ~」
万治に促される様に伊藤は大きく深呼吸をした。
――パン!
小気味の良い音が鳴るよう両手の平を綺麗に合わせ万治は音を出した。
「んじゃ、質問してくね?」
「はい」と伊藤は小さく頷き、万治を真っ直ぐに見つめる。
「さっきの事情聴取で聞き耳立てた事なんだけど、ストーカー被害にあっているのは御茶ノ水の大学に入って二ヶ月くらいの事で間違いない?」
「はい」
「ふ~む、その二ヶ月間で何か大きく変った環境の変化はある?」
「いえ、特には・・・・・・。ただ、バイトを始めたのとサークルに入りました」
「へぇ~」
万治は大きく頷いて見せた。そして左手の人差し指の第二関節と親指を顎添え当て、肘をテーブルに置き、伊藤に近づける様に少し体を前に乗り出し質問した。
「どんな?」
「都市伝説みたいなのを追いかけるサークルで今はシャドージャンプ文明に付いて研究をしています。御存知ですか?」
「ん? いや。知らないかな」
「かなり昔の文明です。知りませんか? 額に第三の目があると言われていて、其れは天眼と口伝されてます。儀式用に漆黒の服を身にまとっているらしいです」
「へ、へぇ~・・・・・・(――シリアスな表情をした俺に何故、爆弾を放り込んできた? いや、真面目な顔、やめろお前。邪眼について話す気満々ですか? ってか文明の名前、まんまじゃねーかって。何故にわざわざ英語表記だよ。仮に存在したとして発見した奴も馬鹿か拗らせた病気か苗字がトカシキだな、コリャ)」
と、内心思うも頑張った笑顔で誤魔化している万治。
アヤメは隣で口をぽかんと開けて遠くを見つめ、笑わないように無心になっている様だ。
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