#2

「あ~えっと。お二人さん? ちょっとゴメンね? この女と少し話すことあるから、微妙に物理的に離れるますね? 背中向けますね?」


 軽い咳払いの後に万治は精一杯の引き攣った笑顔で伊藤と川下に訪ねると、舌打ちと共に背を向け二、三歩進み背中越しに手招きしてアヤメを呼んだ。


「どしたの?」


 その呼びかけにススッと近寄り、キュルンなんて効果音が鳴りそうな可愛い屈託の無い笑顔で万時と肩を並べる。


「どうしたじゃねぇよ。どうすんだよ、この空気完全に滑ってますやん。プロローグで個性見せようと必死に言葉考えても結果、ただ単純に読み難い上にネタも面白くないネット小説ぐらいの滑りっぷりやん」


「あ、そっちの心配なのね」


「まぁそっちの心配は6割として、犯人探しなんて無理に決まってんだろ?」


「え? そうなの?」


「いや、そうだろ。テッキリYOUは頭の良い娘だと思ってたよ。通り魔なんて一般素人が捕まえられる訳無いでしょ」


「いやいや、でも、アンタさ。さっき刑事さん達との事情聴取してる時、左の眉毛を左の中指で掻いてたよ? 」


「う~ん・・・・・・」


「親友の目は誤魔化せませんなぁ、ほらあの時。刑事さんが伊藤さんに今日の出来事の時系列聞いてた時にさ」


「チッ、小さい所まで良く見てんな」


 そう言われたアヤメは背筋を伸ばして、ついでに鼻の下まで伸ばし、人差し指を立てた低音ボイスで返した。


「はいぃ? おや、これは失敬。細かい所まで気になるのがウチの悪い癖」


「俺とした事が迂闊でした! とりあえず、もう面倒なのでアヤメとはお買い物を控えましょうかねぇ」


「まだ、わからないのですか! でも、実はコレ。チャンスなんですぜィ、旦那ァ」


「いや、お前の情緒どうなってんの。右京さんから総悟って」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る