秋葉原駅で突き落とし事件~事件編~

#1

 それから時間は経ち、現在の時刻は17時半である。

 被害者・伊藤いとう、23歳とその友人・川下かわした、22歳。

 特に特筆すべき点は見当たらない何処にでも居そうな二人の女子大生である。

 身長もどちらも160センチ位で女性の平均と変わらなそうだ。

 並びに目撃者及び重要参考人として、この日秋葉原で行われたイベントにて発売される涼○ハ○ヒの憂鬱と言うラノベ作品の登場キャラクター長門のver.裸法被ふんどしを買に来て、見事抽選から外れたオタクの九栖ここのす万治まんじ、21歳と、その友人であろう立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花と例えても過言無き美しさの杜若かきつばたアヤメ、22歳は、警察による現場検証と事情聴取が漸く終わった所である。


「今日は本当にありがとうございます。なんと、お礼を申して良いか・・・・・・」


 足に包帯を巻いて松葉杖を突いた伊藤は深く頭を下げた。それに合わせるように川下も頭を下げる。

 


「いいって。命が無事で何よりっしょ。んな?」

 

 首をかしげて可愛くウィンクし、万治に同調を促すアヤメ。


「んですな。んじぃ~……や?」


 帰ろうと手を上げ去ろうとした万治の腕を素早く静止し、ニヤリと笑いアヤメは伊藤達に向かって告げる。


「あの~、良かったらさ、ウチら犯人探しを手伝うかい?」


「……………………。えぇ?」


 目を丸くして何度も瞬きをする、伊藤と川下。

 と、吃驚して犬にお手をさせる様に手の平を上に向けベロを出した古典的リアクションの万治。


「い、いや……でも、通り魔だって刑事さんも言ってましたし、犯人を特定するのは無理なんじゃないかと……」


 首を左右に振って難色な表情を見せる伊藤。それを見てアヤメが首を左右に強く振って否定するよう言った。


「大丈夫よ。なんてたって、此処に在らせられるは、見た目はダサい二十代、中身は2浪した巨乳好き、と言うよりも、おっぱいなら何でも好きなクズ野郎。その名は、オタク探偵――九栖万治! が居るのですから」


 アヤメは両手でヒラヒラと万治を扇ぎ、待ってましたと主人公を大々的に紹介する様に万治を二人に紹介したのだ。


「いや、俺に話し振られても、ってオーイ。情報としては本当のクズでしかないじゃん!」

 

 ポッカーンと二人のやり取りを眺めている、伊藤と川下であった。

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