第106話 躯 く

 No80ハチマルは東の倉庫へ向かった。

(どうせ破壊しか考えないんだ…アイツラは)

 ならば、破壊は任せればいい、No80ハチマルは別の手段でYAMAをふうじようとしていた。

 オーパーツはオーパーツでしか破壊できない、おそらく。

 簡単に破壊できないから現代まで残っているのだ。

 YAMAの遺伝子情報を残したのはなぜだ?

 失敗作だったはずなのに…。

 YAMAの言う天上人が宇宙人かどうかなんてどうでもいい。

 当時の、いや現代でも追いついていない程の文明人だったのだろう。

 興味本位、自己満足、虚栄心、自己顕示欲…なんだか解らないが、当時の人を遺伝子的に調べ、弄り回して完全なヒトを造ろうとした。

 YAMAは失敗作だ。

 彼の見解ではキリストも…。


(競争でもしたのかね?異種族同士で、原住民の魔改造か…迷惑な話だ)

 その失敗作をなぜ、未来へ残した?

 恥の歴史ではないのだろうか?

 ダヴィンチが駄作を残したいと思うだろうか。


 なにかソコに違和感がある。


 キリストは破棄された。

 結果、ミイラとなっても生殖機能は復元可能で、僕らは産まれた。

 欠陥品としてだが…だが仕方ない、キリストですら失敗作なのだから、僕らが欠陥品でも仕方ない、ある意味、正しくコピーされた結果だとも言える。


 No42フォウツゥはなぜ完全体として産まれた?


 キリスト単体では埋まらなかったナニカをNo42フォウツゥは埋めたとでもいうのか?

 それはコピーではないYAMAは確かに言った、模造品が本物を超えたと。


 なにが違う?

 オリジナルとコピー…製作者の腕か?

 違う…キリストは繋ぐための布石だった。

 あれはアレで完成品だった。


 YAMAは?

 身体を捨てた今が完成品なのか?

 ただのヒトにしか思えないが…ある意味、自分に近しい感じを受けた。


 YAMAを未来へ繋いだ理由がある。

 つまりYAMAには致命的な欠陥がある。


 だから公に出来ない書庫であるココに来たんだ。

 問題は、パソコンのデータバンクにアクセスできないこと…この膨大な書の中からYAMAに関する記述を探さなければならない人力で…独りで…。

(マザーがいれば…数秒なのに…)



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