第23話 Whore reunion 彼女との再会

 コインランドリーからアパートへ帰る途中、コンビニに寄ろうかと思った。

 時刻は20時を回った頃、財布の中にはさらわれたときより大分多い1万円札が入っていた。

 1週間のバイト代にしては高額すぎるほどの金。

 数か月は何もしなくても生活できる。


 とはいえ…どうしたものか。

 バイトはクビにはならない…そういうバイトなのだ。

 酷い奴は1か月も連絡もないまま休んで、平気でフラッとバイトのシフトに入る奴も珍しくない。


 その日は何もしなかった。

 翌朝、バイト先に連絡して、夜からのシフトに入ることにした。

 皆、何も無かったように、1週間休んだことについて聞く奴もいない。

 そんなものだ。

 ここでは、本名すら名乗らない奴もいるんだ。

 僕のことなんて、気に掛ける奴もいない。


「じゃあ、深夜頼むわ、9時には交代が来るから」

「はい…あの…すいませんでした」

「ん?」

「あの…無断で休んで」

「あぁ…そんなのばっかだから、気にすんな、じゃな」


 1人になって、またパソコンの前に座り、モニターを眺めて過ごす日々に戻ってきた。

 ひとつだけ、変わったことがある。

 逃げ回る必要がなくなったことだ。

 僕には、監視が付いている、僕に何かあれば、叔母が動くだろう。

 そして身柄を引き取る。

 叔母には自信があるのだ、僕が自分のもとに戻ってくるという自信。

 僕がここに戻った理由…そんなものはない。

 叔母が唯一解らないとすれば、その理由だけ。

『ナミ』の存在、それだけ?

 僕がココに戻った理由があるとすれば…きっと…。


 モニターを横切った『ナミ』

 迎えの車はまだ来てない、僕は足早に従業員出入り口へ向かった。

 ドアを開けると、ナミが座っていた。

「ふうっ…う~ユキヤだ…戻ったの?」

「あぁ…」

「辞めたのかと思ったよ…良かった」

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