ドラゴライト
悠木 柚
ドラゴライト
プロローグ
俺語り
進むにつれ寒さが増し、徐々に体温が奪われてゆく。
だから極寒より灼熱をイメージしていたのだが違ったらしい。
今となってはどうでもいいことだが……。
これでもかと重ねがけしてもらった呪術の大半はマグマを通過した時点で崩壊し、輝石の結晶柱が乱立する幻想空間へと至った頃には残り全ての呪術効果が消失していた。
今、生きているのは奇跡といってもいい。
だが奇跡だろうと何だろうと俺は……。
下り傾斜の強い洞窟深部、その遙か先から光が射している。
俺はとうとう見つけたのか。
あれさえあれば、あれさえ持って帰れれば……。
だがそれは叶わぬ望み。
呪術効果も消失し満身創痍のこの現状、帰る術は既にない。
妻よ、志半ばで倒れる俺を笑ってくれ。
お前の力になれなかったことを本当に悔しく思う。
息子よ、こんな父さんを許せ。
姉さんと仲良く、健やかに育ってほしい。
友よ、妻と子供達をどうか――
" 龍の魂を見透す者よ "
な、何だ!?
" この星の輪廻には刻まれず、しかし我らの本質を理解する者よ "
俺に喋りかけてるのか?
" 教えておくれ、お前のことを "
燃え尽きて今にも消えそうな俺のことを?
" 聞かせておくれ、お前の話を "
くだらない価値観に縛られながら生きてきた俺の話を?
……良いだろう。
どうせ死亡フラグは揺るがない。
ならば命が閉じるまで、
「聞かせてやる。俺が今までどう生きて、何の目的でこんな場所にまで来たのかをな!」
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