春の雪
春の雪
駅前の犬
毎朝同じ時間に無理やり目を覚まし、同じ時間に家を出て、大概同じ時間に信号待ちをする。はいこのタイミングで、青。もう間隔さえわかる。
反対側で信号を待つ人々も同じタイミングで歩き出し、風を連れてすれ違って行く。
そうして辿り着く最寄駅への入り口のそばには、いつも散歩中のあの犬がいる。
地下へ急ぐ人間たちを横目に、手足を伸ばし両耳をも地面に投げ出しながらじっと寝そべる、あのハッシュパピーが。
私はいつもあの犬のようになりたかった。
あの犬はまるで、同じ世界に存在する生命ではなかった。あの犬と私たちの間には何次元もの壁があり、それらが凝縮されて透明になっているだけのように見えた。
あの犬のいる場所へ、私はいつまでも行けなかった。
勤めていた会社を辞め、毎朝同じ時間に起きる事も同じタイミングで信号を渡る事もなくなった今でも私はふとあの犬を思い出す。
じっとこちらを見ていた、あの黒い目を。
春の雪 春の雪 @___haru_17___
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
のんびり田舎の暮らし最新/ねここ
★17 エッセイ・ノンフィクション 連載中 659話
津多ノート最新/津多 時ロウ
★38 エッセイ・ノンフィクション 連載中 674話
O-Sunの心ついったー最新/O-Sun
★10 エッセイ・ノンフィクション 連載中 500話
娘が学校に行かなくなった最新/@read356
★0 エッセイ・ノンフィクション 連載中 3話
表現のきざはし最新/そうざ
★26 エッセイ・ノンフィクション 連載中 66話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます