第3話■出会い
「面接で泣き出した? なにそいつ……」
それが彼女の第一印象だった。
僕は父親が所長をしている小さな介護事業所でヘルパーとして働いていた。
訪問介護の方が主だったが、一緒に経営している小規模デイサービスの手伝いもしていた。
親父曰く、退職したデイ職員の欠員補充で新しい職員を探すために何人か面接をしたが、前の職場の話で急に泣き出したやつがいて興味深いから雇ってみたとのこと。
デイサービスの事務所に入ると親父とそいつがいて、(年上なのに面倒くさそうだな)と思い、適当に挨拶を済ませて外に出ることにした。
ペコッと無言で軽いお辞儀をして、バタンッとぶっきらぼうにドアを閉めると……
「今日からよろしくお願いしますっ」
「あ……よろしくね。ちなみに今の息子」
「え~~~!?」という声が中から聞こえた。
(変なやつ……)
仕事が始まると彼女はいつもにこやかに利用者に向き合い、泣いている姿なんて想像できないほど笑顔を絶やさなかった。
仕事も丁寧で利用者からの受けもよく、ミスも他の職員と比べて少なかった。
ある日、休憩中に電子レンジが爆発した。
(……といっても中で破裂しただけだが)
コンビニ弁当に付いていた醤油を取り忘れたという彼女……
また違う日も爆発した。
今度はカレーを弁当に入れて持ってきたが、温める時にラップし忘れたという。
「すいません……すいません……」と謝る彼女をバカにするのが楽しかった。
ある雨の日、みんながうんざりしている中で彼女が突然呟いた。
「……雨って好き……」
「なんで?」
「……秘密」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます