第一の質問


「では、まず一つ目の質問です。これは皆様にもお聞きしているのですが、皆様がこちらの世界に来る際に与えられた、能力について報告して下さい。能力については、頭の中で確認しようと思えば分かるそうです。」



「なんか、かなり適当な感じで確認できるんですね。」



そんな無駄口を言うと彼女の中の不信感がより強くなってしまった。


余計な事はやめてさっさと確認するか。



俺は目を瞑り頭の中で、能力を思い浮かべた。




目片 祐也


能力

《すべてを知る目》

(すべてを知っている目)

《空を飛ぶ》

(空を飛べる)



シンプル‼︎いや、はぁ?なんだこれ?能力についてほとんど説明がないんですけど。


まぁ、説明の少なさについては後で考えるとして、まずは能力の確認だな。

《すべてを知る目》については前からある能力だから、今回の事で手に入れたのは《空を飛ぶ》と言う能力だ。


俺の特徴に合わせての能力らしいのだが、何処が合っているんだ?能力からして何となく自由奔放ってイメージが浮かぶが、俺にそんなイメージは………………あぁ、そう言う事か。《空を飛ぶ》っていう能力は自由奔放という特徴じゃなくて、周りから浮いているって事か。確かに俺はこの目のせいで周りから浮いているが、特徴になるまで浮いてるのか……



さて色々思うことはあるが、後々考えるとして、能力についてどう話すべきかを考えるとしよう。


まず、考えとしては二つの…………訂正、三つの選択肢がある。


まず一つ目は能力について全て正直に話す。


論外だ。一番選んじゃいけない選択肢だ。

目の前にいるメイドはあの王女様の専属だ。俺はあの王女様を全く信用していないし、あの夥しい死の事を考えれば、俺が二つの能力を持っている事は隠しておくべきだ。



二つ目は能力について片方を話す。

これに関しては真っ先に浮かんだ選択肢だ。片方の能力について話して、もう片方は隠しておけば、いざって時にはきっと役立つ筈だ。が、それでも片方の能力は知られてしまう。


そこで三つ目の選択肢だ。


三つ目は嘘をついて両方の能力について隠す。

嘘をついてごまかせたなら、あの王女様に俺の情報を与えず、この場をごまかせる筈だ。

ただ、嘘は全くのデタラメだと直ぐにバレてしまう。

では、どんな嘘が一番良いのか?それは……


「能力を確認しました。」



「少々時間がかかっているようでしたが、何か気になる事でも?」



「えぇ、能力については直ぐに分かったのですが、あまりにも説明が短いので少々驚いてしまいました。」



「そうですか。それで貴方の能力は?」



「はい、俺の能力は《よく見える目》だそうです。」


ほんの少し、本当を混ぜた嘘をつく。



「《よく見える目》というのはどのような能力なのでしょうか?」



「どのようなと言われても、左目がよく見える様になるとしか説明が無いので詳しい事は何も」



「そうですか、やはり皆様と同じ様に説明が少ないのですね。」


「他の人も能力についての説明が少ないんですか?」



「はい、その為能力がどれ程のものなのか皆様が混乱しておりますので明日の朝能力を確認する為に、稽古場に集まっていただきます。」



この言葉が出るという事は何とかごまかせたかな?少し怪訝な表情を見せたが、何とかなったな。



《よく見える目》という創作した能力ではあるものの俺が持っている《すべてを知る目》の劣化版として使用すればボロが出る可能性は低いだろう。



《空を飛ぶ》の劣化版を創作するというのも考えた。だが、もしあの王女様から逃げる時、空から逃げるという選択肢が選べなくなる事を危惧して諦めた。


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