異世界転移
俺達が呼ばれた部屋はとても大きく、31人いる俺達が横になったとしても余裕が
ありそうな場所だった。天井はドーム型になっていて、もっとも高い場所で6m程ある。
周りには絵や壺やシャンデリアといった調度品やがあり、そのどれもが美術に詳しくない俺でも高いとわかる程の代物が多数置かれていて、まるで美術館に来たように感じた。
この部屋には俺達以外にも人がいて、部屋の中心に立っている俺達の周りを囲む様に何人もの人がいた。服装は真っ白な法衣に似た服で、跪き両手を合わせ、祈りを捧げているような体勢でいた。
そんな中1人の男が立ち上がった。
その男は年齢は見た目は20代前半で、身長が1.8m程あり、柔らかな雰囲気を持ったイケメンだった。その人の法衣は他の人と違い金色の刺繍が施され、金色に輝く杖を携えていた。
「ブレイブ王国へようこそいらっしゃいました勇者様方。私は勇聖教にて枢機卿の位に就いております。名をトーマス・アルカードと申します。以後、お見知り置きを」
悠然と微笑みながら、こちらにそう言い放った。
紹介が終わった後、トーマス・アルカードに連れられ場所を移した。
先程いた部屋よりも広い大広間に来た。
大広間には大きなテーブルにそれを囲う様に椅子が置かれていた。
俺達はバラバラに椅子に座るとタイミングよくメイドや執事が飲み物を持って来た。
一人一人渡されたそれは、淡い琥珀色の液体で何の匂いかは分からないがとても甘い香りがした。
「では、皆さん飲み物を飲みながら、私の説明をお聞き下さい。」
そうトーマス・アルカードは言い放つと何故俺達が呼ばれたのかの理由を説明し始めた。
内容はとても簡潔で魔王を倒してほしいそうだ。この世界は疲弊し魔王を倒す力がない為勇者として俺達を呼んだそうだ。俺達与えられた力はとても強いものであり、その力が唯一魔王に対抗できるらしい。この戦いが終わるとこの世界に残るか元の世界に戻るかを選ぶことが出来て残るなら貴族として迎え、帰るなら金銀財宝を報酬とするらしい。
話をしているトーマス・アルカードは真剣な表情でこの世界の現状と魔王の危険さを話し、そして俺達は凄い力を持つ勇者なのだと話し、彼のカリスマによるものなのかその話を疑う者は俺を除いて誰も居なかった。
俺が疑う理由は俺の目で確認が取れないからだ。
俺の左目は相手を見れば直ぐ様相手の考えが分かるはずなのに、トーマス・アルカードの考えが靄がかかったこの様に見えないのだ。
彼は勇聖教の枢機卿だと言っていた。枢機卿は教皇の補佐を務め実質ナンバー2と言える。そんな極めて高い位を持っているのだから、何かしらの術を使い機密を漏らさない様に心を読めなくしている可能性はあるが、心が読めないのなら信用すべきではないとそう思った。
「それでは説明も終えましたので、我らが国王陛下に挨拶に向かいましょう。」
トーマスはそう言い席を立とうとすると
「いや、私がこちらから出向いたのだからその必要はない。」
その声とともに、俺達が入って来たドアから男女合わせて4人の人物が現れた。
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