午前三時の白昼夢

芝迅みずき

1: 西風の訪れ

 作業の気分転換に、夜空の下へと出ることにした。

 とは言え、今は午前二時半すらとっくに過ぎた時間だ。外を歩き回ると言うことはしない。

 それはそれで気分がいいだろうが、物騒な世の中だ。女性にしろ男性にしろ、真夜中に一人で出歩くのは危険だろう。だから玄関先で、しんと冷えた空気を吸って、夜空を眺めるだけである。

 そっと玄関の扉を開け、外に出る。開けた時と同じように、そっと扉を閉めた。

 夜空を見上げれば、漆黒の夜空に星が瞬いている。新月だったのか、星がいつもよりも綺麗だ。澄んだ空気の日は星がよく見える。

 目を閉じて夜気を吸い込めば、煮詰まらずに苛々していた頭が、すぅと落ち着いていくような心地がする。

 大きく深呼吸をした。冷たい空気が肺を満たす。それを今度は、ゆっくりと吐き出した。

 持ってきていた腕時計を見る。文字盤の小窓から見える日付は変わって、二十三日と知らせていた。時計の針は午前三時を差している。

 そろそろ家の中に戻ろうかと思った時だった。西の方から突風が吹きつけた。思わず目を瞑り、身を竦める。静寂をさらっていくような強い風だった。

 吹き抜けていった風に我知れず息を吐き、そっと閉じていた瞼を持ち上げる。

 ――目を瞠った。

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