目を覚ましたら朝だった。僕はいつの間にかリビングの机の上に突っ伏していた。少し動いたら毛布が掛かっていたので、多分起きてきたお母さんが掛けてくれたのだろう。

 それにしてもおかしい。自分の部屋で倒れたはずなのに、どうしてリビングにいるのだろう。

 半分寝ているような、寝ぼけた状態で戻って来たのだろうか。いや、それならむしろ、自分の部屋のベッドに潜り込んだ方がずっと利口だろう。

 全部、夢だったのだろうか……。

 でも、それにしては随分とはっきりした夢だった。たまに現実と区別がつかない夢を視ることがあるらしいが、まさか自分が視ることになろうとは……。

 そうしてふと思い出す。月は気を狂わせると言われていることを。

 僕は月光に狂って、夢幻でも視てしまったのかもしれない……。

 立ち上がって、顔を洗おうと洗面所に向かった。蛇口を捻り、水を掬おうと両手でお椀の形を作った時だった。いやに右手がきらきらと光っていることに気付く。よくよく見れば、細かい金色の砂が掌一面に張り付いていた。

 僕は目を見開いた。そして思う。

 どれもこれも、全て夢ではなかったのだ。

 あの静寂しじまの中、満月だけが息をしていたかのような世界で見た光景は――。

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