静寂の満月

芝迅みずき

Prologue

 静寂しじまの満月を見たことがあるだろうか?

 僕は見たことがある。

 静寂の満月の夜は、実に不思議な夜だった。

 まるで雪が降ったかのような耳鳴りのする静けさ。

 街の灯りすらも呑み込んでしまいそうなほどの、真っ暗な闇。

 きっと全てが眠っているのだ。魔法がかかったように。

 草木すら眠っているのだ。丑三つ時のように。

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