第96話(移動中)
村でタタ達の擁護が事情説明などをしたためだろう。
また、村自体を救ったことになるためか、ここからエリス共和国までの食事、サンドイッチのようなものと飲み物を渡してもらえた。
一応もしものためにちょっとした携帯食料を持っていたが、シーナ曰く、控えめに言っておいしくないらしい。
だからこういった場所で新鮮なものが手に入るならそちらの方がいいそうだ。
ここからエリス共和国に向かうと、たどり着くのは夜ごろになるが、
「エリス共和国も最近は不穏であると聞きますからね。食事は持って行って損はないでしょう」
そう、タタのご両親が言って、出来立てのパンを使ったサンドイッチをくれた。
後で楽しもうと思う。
他にも日持ちしそうな焼き菓子ももらってしまった。
彼はいい両親に恵まれていたようだ。
また、彼らも含めて村の人たちには、壊してしまったとはいえ洗脳の魔道具はそのままにしておいてもらう。
後ですべてが終わった後に人をよこして検分するためだ。
だからその場所に入らないよう、柵で囲っておいてもらうことにした。
そんなこんなで俺たちは、村を後にしたわけだが、代り映えのあまりしない土の道を歩きながらシーナは、
「つくのは夜遅くになりそうだから一泊していかないか、と言われたけれど早く少しでも先に進みたいわ。少しでも早くマサトを見つけたい」
「そうだな。でもあいつもああ見えて真面目だし、確かシーナの城の“客人”だったか」
「そうで。でも……あまりいい待遇ではなかったから城をよく抜け出していたわね」
「特殊能力(チート)が不遇だったからか?」
「そう。周りもそう判断していたし、彼もそう思っていたみたい。でも、私はマサトの能力は、不遇でもなければいらないものでもないと思うの。性格も気に入っているというかお人よしだしね。それに今一番必要なのは彼の能力だから」
そういってほほ笑んだシーナに、俺はこう、なんとなくだが聞いてしまった。
「シーナはその……マサトが、恋愛感情で“好き”なのか?」
つい聞いてしまったその言葉だが、そこでシーナがあきれたように俺を見た。
「すぐに色恋沙汰にするのはどうかと思うの。女がだれでも恋愛脳だと思わないことよ。でも、す、少しくらいなら腕を組んであげてもいい……わ。こ、こうやって手伝ってくれているわけだし」
そう、恥ずかしそうに俺の方を見ながら言ったのだった。
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あとがき
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