第82話 一時的な無力化

 軽い痛めつけ……で済んでいるかどうかは分からないが、この程度では効果がないようだ。

 ではもう少し強めにすべきか?

 俺は考えてしまう。


 対人戦については、正直あまり考えていなかった。

 異世界だし魔物やそれに準ずる物との戦闘が主だと思いこんでいたように思う。

 そして、自分に敵対すると言ってもその人物が悪意を持って襲い掛かろうとしてくるのだ。


 だから対処しても問題ないと思っていた。

 だが今は、彼らの責任ではないのに襲ってきている。

 できる限り怪我をさせずに無力化したいが……下手をすると痛みはあっても、この“音”によって襲うようにされているのかもしれない。


 異様な怪力を示しているように。

 だったらまずはここにいる人物達を一時的でもいいから足止めを行い、それからこの“ステータス・オープン”で見た情報を全部読んで、この“操作の樹”だか何だかに対処するべきかもしれない。

 となると、


「……電気関係でしびれさせる……とりあえず、しびれる程度の電気を周囲に……円形状に発生……電気系の技は“雷の槍”」


 以前シーナに見せてもらった物を思い出しながら、“効率チート”を使うようにさせる。

 ふわっとした設定だが、上手くいくだろうか?

 そう俺が思いながら魔法を使う。


 足元に広がった魔法陣の光に気づいて、ロゼッタやシーナ、そして青い顔をしたセレンがそこで戦っていた村人をその光の魔法陣に蹴り入れる。

 同時に、ぱちぱちといった光がはぜるような音がしてそして、村人たちの周りに黄色い光の火花が散ったかと思うと、


「ぐわああああああ」


 そんな絶叫がそこら中でする。

 大丈夫だろうかと不安に思ったが、それはすぐに病んで村人たちが倒れる。

 小さく弛緩しているから、生きてはいる……と思う。


 とりあえずはそのあたりはまず考えないようにして、先程の“ステータス・オープン”によってあらわされたこの“操作の樹”について知り、出来れば停止させたい。

 そのまま破壊すると爆発などをしそうで怖いから、という何となくの理由だったがそれは、すぐに情報を読んでいて正解だったと気付く。つまり、


「『なお、この“操作の樹”を破壊した場合、機能の完全停止時に特定の“音”を出して目撃者を封印するため村人同士の殺し合い、および、自殺を誘発させます』……なんてことだ」


 そこに書かれた文章を読み上げて俺は小さく呻いたのだった。

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