第75話(音)

 セレンは耳が良いらしい。

 そこでセレンが魔族の特徴らしい兎耳を出した。

 兎の耳がゆらゆらと揺れている。

 周りに人がいないから出来る事だろう。


 そう俺が思っているとそこでセレンが兎の耳を揺らして、すごく気持ち悪そうな顔をしてからひっこめる。


「ここ周辺にすごく嫌な音がしています。ただ音の発生源を探るには、その……気持ち悪くて私は聞こえそうにありません」

「そう、仕方がないわね。何かいい方法はないかしら」


 ロゼッタがそう呟くのを聞きながら俺は少し考えて、


「その音は、通常はないような特定のリズムなりなんなりを繰り返す“音”なのか?」

「そう……ですね。気持ちの悪い、頭に響くような“音”です。出来ればここから逃げ出したいくらい……」


 そう呟くセレンにロゼッタが、


「その音は、以前の“彼ら”の時も聞こえていた? 私たちの所が攻められた時に」

「その時は聞こえていませんでした。でも私は前線に行っていません。ロゼッタ様が無茶をしないように部屋に押し込めるのを手伝えと、命令されてしまっていましたから」

「そうだったわね。全く邪魔をして」

「当たり前です。私達にとってはロゼッタ様は大切な姫様なのですよ!?」

「ありがとう、セレン。それで、アキラは何かを思いついたのかしら」


 ロゼッタが、このまま行くとお説教になりそうだと察したのか、話題を変えた。

 セレンは機嫌が悪そうだが、それよりも話を進めたかったので俺は、


「特定の“音”が聞こえるという事は何かの意味があるはず。それを出させることによって、スイッチというか、特定の行動をさせるようにしているとか」

「……ずっと“洗脳”をして操るのはその特殊能力(チート)の効果の持続や処理の関係で難しいけれど、“集団”に特定の“単純な行動”をさせるようしこんでおいて、その時が来たらうごくようにして……」

「行動を少なくしてその特殊能力(チート)をかなり少なく使うようにする。それでいて遠距離でわざわざ命令しないで済むようにしておく。でも、こんな村は他にあったのか?」


 この世界の事情には疎い俺が聞くと、ロゼッタやシーナは聞いたことがないと答える。

 そうなってくると、


「“実験的な意味があった”のか? そしてここ最近にこれはされたって事か。……新しい方法を手に入れて、この敵である“彼”の能力が上がっている要因……音……装置……魔道具、か」


 俺は、それらを繋げて、ある事に気づいたのだった。

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