第55話 新兵器が

 魔物の体内から緑色の石が顔を出した。

 これが魔物の“核”なのだろうか?

 この石の周囲から再生が始まっている。


 だからこの石が敵の中心部分なのかもしれない。

 そうなってくると、


「“炎の矢”」


 俺はそう叫んで剣をふるい、一気に何本もの矢を生み出して一斉に撃ち込む。

 当たった場所から何かガラスの割れるような音が響く。

 “核”事態はそこまでかたい防御力を持っているわけではないのかもしれない。


 そう思って様子を見ていると爆炎が吹きあがった。

 最後の一発が何かに引火していたように見える。


キギァアアアアア


 そんな音がして目の前の魔物が崩れていく。

 どうやら倒せたようだった。

 自己再生能力付きの魔物だからどうなるのかと俺は思ったが、何とかなったようだ。

 

 後ろの他らもまだあの不気味な音はしない。

 俺達の方にこうふぇきする用無し例はまだ出ていないのか、ここまでたどり着いていないのか分からない。

 とはいえ、どうにか出口付近に現れた危険そうな魔物も倒せたようだった。


 そう安堵しているとそこで、 


「……魔物を倒していただいたことに関しては私もお礼を言うべきなのでしょう。ありがとうございます」

「あ、はい……」


 そこで不機嫌そうにロゼッタに俺はそう言われてしまった。

 俺は何か問題があっただろうかと思っていると彼女は更に、


「ですが、あれは……さすがにあれは酷すぎます!」

「? 何がでしょうか」


 あれ、と言われて何のことだろうかと思っているとロゼッタが涙目になり、


「私たちが苦労して開発した新兵器の魔導書……それも更に完全な形にして発動するとは、一体何事ですか!?」

「え、えっと、すみません」

「全く異世界人は……私達の努力の結晶の魔法陣が……くぅ」


 悔しそうに魔導書を握りしめるロゼッタ。

 どうやらその魔導書の魔法を俺が特殊能力(チート)を使って再現してしまったのがロゼッタには衝撃的らしい。

 例えるなら、苦労して解いているクロスワードパズルを、その隣で鼻歌交じりで解いてしまうようなものかもしれない。


 確かにそんな事をされては怒りたくなる気持ちも分かるが……そこでシーナが、


「とりあえずここから出ましょう。まだ下から黒い箱の怪物が出てきても困るし」

「そうだな。あ、周辺に人がいるか見る方法はないか……“効率的に人を探す”で、見つけられないか? ここは危険だからと伝えたほうがいいよな」


 そう俺は言ったのだった。

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