第32話 明かりをともす
暗闇を怖いと思うのは、実のところ本能として当然だったのかもしれないと、現在俺は痛感していた。
「魔物が次から次へと出てきているな。しかも結構強くないか?」
「こんな暗闇までやってくる人間はそうそういないから、警戒心が薄いんじゃない? だから私達を獲物だと思って襲ってくる」
「それにしては強いような」
「そう?」
「だってさっきシーナは二回も魔法を使っていた。その前は一回だったしな」
「暗くて狙いがそれるのもあるわ。それに威力をやや抑えている。だってこんな場所で生き埋めにはなりたくないもの」
そう答えたシーナを見つつ、俺も俺で魔法の攻撃を放つ。
シーナと同じように若干威力を抑えた形の氷の魔法。
もちろん倒れた時の魔石は回収だ。
だがこんな暗闇をずっと進んでいくのはやはり精神的に良くない。
「シーナ、このカンテラの明かりはそれほど魔力は使わないのか?」
「まあ、ただの明かりだからね。それがどうかしたの?」
「……持続時間一分程度にして、風でできる限り奥の方に飛ばして……といった形で、こうだ!」
俺は明かりを多数生み出すように想像して、それを先の方にまで飛ばす。
まだまだ一直線上の道が続いているのでこれは可能だ。
そして光に照らし出された魔物達が急ぐように暗闇に逃げていく。
どうやら自分たちの存在が相手に認識されるのは嫌であるらしい。
しかも逃げる速度がそこまで速くない。
とはいえ無駄な戦闘は出来る限り避けたい。
だから逃げるものは追わずに俺たちは進む。
途中で暗がりから光の所に魔物が出てくることはあったが、真有が認識しやすい事もあってそれほど苦もなく倒せる。
明かりもしばらくすれば消えてしまうので、見通しの良い遠くからこちらの居場所をそこまで知らせるわけではない。
そういったように魔法を使っている俺にシーナが、
「一定時間に魔法が消えるような絶妙な魔力の注入と保存。結構難しいはずなのだけれどね」
「そうなのか? 大体これくらいかなってわかるんだが」
「魔法に対する感覚が異世界人は鋭いのかしら。だからこんな風に魔法が使えるのかしらねっと……ここを曲がらないといけなそうね」
「そうみたいだな。でもこの地図、俺たちの場所も表示されないのかな……あ、赤いマークが二つ出たな。これに沿っていくか」
俺が現在地が出ないかと念じるとそこで赤い光の粒の形をした表示が現れたのだった。
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