第21話 地味で根気のいる作業

 指示された場所はここからそんなに遠くない。

 だったらすぐにでも見に行ってしまった方がいいのでは、と俺が思って聞くとシーナは首を振り、


「接触した関係で、何らかの形でその場を移動しないといけなくなったら、夜の移動は面倒だわ。最近特に夜行性の魔物の活動は活発だもの」

「そうなのか。そういえば何か厄介ごとに巻き込まれている、って話だったか?」

「ええ、そう。……敵対的な人物であったなら、話を合わせて行方を探って行く方向になるから、その時は私の話に合わせてね」

「分かった。……確かにヒントというか痕跡が残っていたとして、それが敵か味方かは分からないか」

「それにその“情報”事態がお金に代わるとなれば、何をしてくるかもわからない。それも視野に入れておかないと」


 シーナが幾つもの可能性を口に出す。

 確かに善良なだけの人たちで世の中は構成されていない。

 そう俺が思いつつも、


「なんだかほとんどの事をシーナに決めてもらっている気がするな」

「別に声高に何かしたいって自己主張ばかりするよりはいいと思うけれど。今の案に問題があればもちろんアキラだって私に言うでしょう?」

「それはもちろん」

「とりあえず目立ちたいからといって“否定”から入られても困るもの。世の中声の大きい人間はそこそこいるけれど、そんな人物たちが本当に何かを達成できているのは……あまり見たことがないわ。何かを作り上げるにしても達成するにしても、それまでの過程は地味で根気のいる作業が多いような気がする、と私は思うの」

「そうだな。今も地道に探しているな」


 そう言うと、シーナはそれでも前進はしているでしょう? と冗談めかしたように俺に行ってから、


「とりあえず明日の朝一に行きましょう。……夜に動くのは“悪い人”が結構いそうよね。だから朝早くに尋ねれば……悪い人は眠っていそうじゃない? それで様子を見ましょう」

「となると明日は早起きだが、時間はこの世界はどうなっているんだ?」


 12時間になっていたりするのかが俺は気になったがシーナが、


「安心して。新婚さんのように耳元でささやいて起こしてあげるわ」

「……」

「何よ、文句があるの?」

「いえ、ありません」

「そう。じゃあそろそろ時間だから夕食でも食べに行きましょう」


 そう、俺はシーナに誘われたのだった。

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