第20話 おっぱいおっぱい

 目の前に美少女がいた。

 倒れこむ時に彼女の顔を隠していたフードが外れて彼女の顔が見えたのだ。

 癖のない金色の髪。


 そして新緑を映したような緑色の瞳。

 今まで見たことのないような美少女が目の前に現れた。

 だが今現在、俺は彼女がどんな表情をしているのか分からない。


 何故なら俺は今、彼女の胸に顔をうずめているからだ。

 柔らかく暖かい俺の左右にあるそれ。

 布越しに感じるふにっとしたその感触だけでも、心が一瞬にしてほどかれるようなそんな感覚を覚える。

 

 これは、素晴らしいものだ。

 おっぱい、おっぱいおっぱい、おっぱーい……。

 全ての思考が俺の中で停止して、おっぱい以外の言葉が頭に浮かばない。


 俺は至福の時を感じた。

 だが多分俺は、死ぬかもしれない。

 先程からこの顔をうずめている胸が、プルプルと怒ったように震えている。


 これはあれだろうな殴られるかもしれない、そのまま切り捨てされるのも異世界だしあるかもしれない、おぱーい。

 などと俺が思っているとそこで、


「それでいつまで顔をうずめているつもりなの?」

「……」

「ちょっと、アキラ!」

「はっ! 俺は今何を……」


 ここで俺は正気に戻った。

 そして女の子の胸に顔をうずめているという衝撃の事実に気づき、慌ててその場から飛びのき、


「ふ、不幸な事故だったんだ!」


 俺が混乱しながら言い訳をするとシーナが、やけに優しい声で、


「そうね、うん。それで一つ聞きたいのだけれどいいかしら」

「何がでしょうか」

「私の胸、どうだった?」

「とても柔らかかったです!」

「……死ね」


 そこで俺は、シーナの怒ったような声とともに頭に衝撃を感じたのだった。









 目が覚めると、美少女が俺の顔を心配そうに見下ろしていた。

 どうやら俺は彼女に膝枕をされているらしい。

 ここ、天国か何かか?


 俺がぼんやりそんな事を考えていると、


「よかった、目が覚めたみたいね」

「……あ、胸……えっと、ごめんなさい」


 俺は慌てて謝った。

 目の前のシーナの顔が怒ったように無表情になったから。

 危ない危ない、俺がそう思っているとそこで、


「それで、つい殴ってしまったけれど大丈夫かしら」

「……あ、はい。大丈夫みたいです」

「そう……貴方が目を覚ますのを待っていたら日が暮れたから、とりあえず今日は探しに行くのはなしね。外で食事をとりましょう」

「近場だから覗いてくるのはどうだ?」


 そう俺は聞いたのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る