第359話「看病」
「へくちょい! へくちょい! うぅ、お兄ちゃんの寒いよぉ……。頭がくらくらするよぉ……。ついでに、お兄ちゃんの将来が心配だよぉ……」
「はいはい、妹。分かったから風邪の時はそのまま大人しくベッドで寝ていような? あと、ついでにお兄ちゃんの将来も心配してくれてありがとうな? でも、お兄ちゃんの将来は朝倉さんがきっとなんとかしてくれるから心配は不要だぞ?」
「駄兄ちゃんの将来が別の意味で心配だよぉ……」
(うぅ、お兄ちゃんが風邪を引くならまだしも……まさか、妹の私がこんな時期に風邪を引いて部屋で看病されるなんて……)
「ケホケホ……ッ!」
「ほらほら、無理して喋るから咳が出て辛いだろ? とにかく、今は水分取ってちゃんと寝なさい。お兄ちゃんとの約束だぞ?」
「うにゃぁ……お、お兄ちゃんは?」
(確か今日ってお兄ちゃん、サクラお義姉ちゃんと出かける約束してたよね……? やっぱり、私が寝たら出かけちゃうのかな……?)
「……安心しろ。妹のお前が風邪引いているのに、出かけるわけないだろ? 既に、朝倉さんにも今日の予定は中止って連絡したから、今日は一日中お前の看病してやるよ」
(いつものことだけど……母さんは仕事で家にいないし、あのクソ親父に関しては三日前に高知の友達の所に飲みに行くって言ってから、未だに家に帰ってきてないしなぁ……。
それに……可愛い妹の面倒を見るのが、お兄ちゃんの務めだろ?)
「お兄ちゃん……どうして、私の考えていることが分かったの……?」
「そんなの俺がお前の『お兄ちゃん』だからに決まっているだろ?」
「そ、そっか……えへへ♪ お兄ちゃん……大好き♡」
「はいはい、分かってる。分かってる」
「えへへ……お兄ちゃん、ギューってして♡」
「はいはい、ぎゅー」
「えへへ♪ お兄ちゃん、頭もなでなでして♡」
「ほいほい、なでなで……」
(まったく、妹の奴ってば風邪を引くたびにいつも『こうなる』んだよなぁ……。妙に素直になるというか、甘えん坊になるというか……。
まぁ、多分だけど、普段は俺やクソ親父が頼りない分、自分がしっかりしなきゃ! みたいな感じで気を張っているから、その反動が風邪で現れるのかな?
その証拠に、甘えん坊になっている時の記憶は、風邪が治るといつも覚えてないって言うし……)
「ねぇ、お兄ちゃん♡ お兄ちゃん♡」
「はいはい、今度は何だ?」
「えへへ……呼んだだけ♡」
「そうか。呼んだだけか……でも、喋り過ぎは喉に良くないから無理はするなよ?」
「……うん♡」
(えへへぇ~♪ 風邪は辛いけど……こうして風邪を理由にお兄ちゃんに思う存分甘えられるのは『妹』の特権だよにゃ♡ お兄ちゃんってば、本当に残念なくらいの『シスコン』だから、私が『うぅ~、風邪で昨日の記憶が思いだせないよぉ~』とか言っておけばそれを簡単に信じちゃうんだもん♪
だから、風邪の時は思いっきり甘えちゃうんだもんね♡)
「とにかく、今は風邪が治るまでゆっくり寝なさい。な?」
「じゃあ、お兄ちゃん。私が寝るまで……添い寝してくれる?」
「いやいや……風邪が移ったら流石にヤバいし添い寝はダメだろ?」
「ぶぅ……」
(おい、空気読め。この駄兄ちゃん……)
「ケッホ! ケッホ! うぅ、風邪で頭がくらくらするよぉ……。お兄ちゃんが一緒に寝てくれたら安心して寝れると思うんだけどなぁ~?」 チラ?
「一緒に寝て欲しいって……妹よ。お前もう高校生だろ?」
「……あたち、お兄ちゃんの妹! 3ちゃい!」
「風邪って、そこまで幼児退行する!?」
(まったく……本当にこいつの甘え癖は凄いよなぁ……。でも、確かに小学生くらいまではこんな感じで『お兄ちゃん♡ お兄ちゃん♡』って、俺の後を付いて来てたし……やっぱり、風邪で本当に幼児退行しちゃっているのか?
だって、流石にいつもの妹がこんな人としての最低限の恥を捨てたような甘え方を素面でできるとは思えないしなぁ……)
「仕方ないなぁ……。寝るまでの間少しだけだぞ?」
「うん♪ お兄ちゃん♡ だーいちゅき♡♡♡」
「はいはい……」
「えへへ、お兄ちゃん♡ 一緒に寝るの久しぶりだね♡」
「まぁ、そうだな……」
(まったく……妹の布団に添い寝とかいつぶりだ? こいつが中学生になってからはしてなかったような気がするけど……)
「えへへ……もし、お兄ちゃんに風邪が移ったら、妹の私が看病してあげる♡」
「いや、その心配は無いだろ?」
「ぽぇ……お兄ちゃん、何で?」
「ほら、バカは風邪引かないって言うだろ?」
「アハハ! お兄ちゃん、面白い~♡」
「風邪の所為で、笑いの沸点低くなってない?」
(まぁ、可愛い妹が笑っているんだからいいか……)
「まぁ、だからさ……」
「……ん?」
「俺に『風邪が移る』とか気にしなくていいからさ、今はゆっくり寝ろ?」
「……うん♡」
(大好き――)
「ムニャムニャ……お兄ちゃん……」 スヤスヤ……
「よし、寝たか……」
(そろそろ、腹も減ったしこの隙に何か食べるか……)
「……ん?」 ぎゅ…… ← 安藤くんのズボンが引っ張られる音
「お兄ちゃん……どこいくの……?」
「ちょっと、トイレに行くだけだ。大丈夫、直ぐに戻るからお前は寝てろ。な?」
「うん……分かったぁ……」 スヤスヤ~
「ふぅ……」
(ついでに、妹の奴にもおかゆか何か食べやすい物でも作って――ん?)
~数十分後~
「……むにゃ! お兄ちゃん……?」 きょと~ん……
(お兄ちゃんがいにゃい……)
「お兄ちゃん、どこ……?」
(あ、そういえば寝る前にトイレ行くとか言ってたような……。
てか、いくらお兄ちゃんでも何も食べずに私に付きっ切りってわけにもいかないもんね。
きっと、私が寝ている間にお昼ご飯でも食べてるのかな?)
「本当は分かっているよ……」
(いつまでも、お兄ちゃんに甘えられないなんて……。
でも、あの夏休み――、
『俺はお前のお兄ちゃんだしな。だから妹のことは知ってて当然だ!』
『服の事とか頼むと思うけど……頼りにしてる。
だから、これからも助けてくれないか?』
どこまで言っても私はお兄ちゃんの『妹』なんだ。でも、だからこそ……
妹の『権利』は使えるうちに使っておかないとね♡)
ガチャ ← 部屋のドアが開く音
「おーい、妹よ? おかゆ作ったけど食べるかー?」
「あ、お兄ちゃん!」
(そういうわけで、今日は思いっきり甘えちゃうにゃ♪)
「ぶぅー! 一緒に寝んねしてくれるって言ったのにどうして、私を一人にしたの!
お兄ちゃんがいなくて寂しくて泣きそうだったんだからね? これは、お兄ちゃんが妹の私に『あーん』して♡ おかゆを食べさせてくれないとゆるしてあげにゃい!
だから、お兄ちゃん……♪ おかゆ『あーん』して♡ あと、お兄ちゃんがいなくて寂しかったから『ぎゅー』もして♡ それに、頭もなでなでして欲しいにゃ♡
それに――」
「あ、えっとだな……。い、妹よ……」
「お兄ちゃん……?」
(……あれ? 何で、お兄ちゃんが気まずそうな顔をして――)
「安藤くんから、妹ちゃんが風邪って聞いてお見舞いに来たのだけど……妹ちゃんは本当に安藤くんが大好きなのね? ウフフ♪」
「あたしもサクラから話を聞いてお見舞いに来たんだけど……こ、これはお邪魔だったかなー? アハハ……」
「安藤くん、貴方って男は……風邪で弱っている妹に何をさせているのかしら……?」
「プププ~♪ 本当はぁ~? お見舞いとか超めんどうだったんだけどぉ~? でも、これは来て正解だったかもですねぇ~? プププ……
(……あ、私死んだ)
「お、お兄ちゃん……?」 ゴギガガギゴ…… ← 固まる妹
「いや、おかゆを作ってたらな? 皆がお前のお見舞いに来てくれて……ってか、委員長!? 何で、お前だけ俺を責めてるんだよ!?」
(風邪の妹に、俺が変なプレイをさせてるみたいな言いがかり止めてくれるかな!?)
「ち、ちがうの!? み、皆! こ、これは……」
「「「「うんうん、分かっている。分かっている」」」」
「そ、そうだよね……? これは風邪で――」
「「「「お兄ちゃん……♪ おかゆ『あーん』して♡」」」」 ニヤニヤ
「に、にゃぁあああああああああああああああああああ!?」
(この後、私はもう一日寝込んだ……)
【次回予告】
「皆、いつも応援してくれてありがとう。委員長よ♪
忘れがちだけど、妹ちゃんも安藤くんのこと好き過ぎよね……。あの男の何がそんなにいいのかしら?
……な、何よ? 何か言いたいことがあるのかしら!?
さ、さーて……次回の『何故かの』は?」
次回「読み放題」よろしくお願いします!
「じゃあ、いつもの『ペタリンじゃんけん』を始めるわよ。
皆、出す手は決まったかしら? 今日も気分は『グー』のつ・も・りよ♪
ペタペタ・ペタりん♪
じゃん・けん・ポン♪」
最後にお知らせがあるわよ♪
【チョキ】
「クフフ……皆のコメント、評価、待ってるわね♪」
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