第281話「恐怖を凌駕するもの」



「ふ、フン! 藤林、くだらない妄想はほどほどにしておくんだな!」

「く、くだらなくはないんだよ!? わ、私の中で『安×石』は決してくだらない妄想じゃ――」

「そそ、そんなささ、殺人事件など! ここ、この学校にあるわけなな、無いだろう!」

「――あ『くだらない妄想』って、そっちのことかな? はふぅ、良かった……」

「ん? 藤林、一体何のことだと思ったんだ?」

「石田くん、なんでもないよ? えへへ……」


(危うく石田くんにバレちゃっているのかと思ったよ……ホッ)


「藤林さん、ちょっと待ってぇえええええ!? 今なんかすげぇえ聞き捨てならない単語が聞こえてきたするんだけど!!??」

「安藤くん、なんのことかな? 気のせいじゃないのかな? かな?」

「アン……イシ?」


(何のことかはよくわからないけど……何故だか物凄く危険な単語の香りがするわ……。今度、モモとか委員長に聞いてみようかしら?)


「安藤、何をしているんだ! 早く学校に入るぞ! フン、屋上の幽霊なんて……ぼぼ、僕がただの噂話だと証明して――」


 ピチャ……


「――ん、何だ? 突然顔に水滴が……まったく、こんなタイミングで雨なんて!」

「おい、石田。何言ってるんだ? 雨なんて俺は感じないぞ?」

「そうね。別に空を見ても雲は見当たらないわね」

「石田くん。それに今日は天気予報でも晴れのはずだったよ……?」

「…………は? じゃあ、僕の顔に垂れたのは――」


(――って、水滴をぬぐった指が真っ赤に染まっている……だと?)


 ペロリ ← 石田くんが指を舐める音


「これは……血ぃ――……」 バタン!

「石田くん!?」

「お、おい! 石田!? あぶっね! こいつ、いきなり気絶しやがった……。まったく、俺が受け止めなかったら頭ぶつけてたぞ……」

「『安×石』キタァアアアアア!?」


(い、石田くん!? 大丈夫かな! かな!?)


(……うん、藤林さんとは今度ゆっくり『お話し』をする必要がありそうだな)


「それで、石田の奴が気絶したわけだが……どうするよ?」

「石田くんをこのまま置いていくわけにもいかないわよね」

「朝倉さん! そうか、その手があったか!」

「安藤くん、冗談よね?」

「じゃあ……し、仕方ないから、石田くんは私が責任をもって送っていくね?」


「「え、藤林さん?」」


((送るって言っても一人じゃ――))


「よいしょ……っ!」 ヒョイ♪


((――って、一人で軽々と持ち上げたぁぁああああ!? しかも、お姫様抱っこで……))


「えっと……ふ、藤林さんって意外と力持ちなのね?」

「ふぇ? あ、朝倉さん! そそ、そんなことないよ!? こ、これはただ……石田くんがヒョロヒョロで軽いだけだからね? ね!?」


「「あ、うん……そうなんだ」」


((それはそれで、どうなんだろう……))


「じゃあ、私達は先に帰るから……朝倉さん、安藤くん。あとはお願いね?」

「ええ、藤林さん。気を付けて帰ってね」

「もし、重かったら石田は途中で捨てていいからね~」

「うん、じゃあ……ね? エヘヘ~、この石田くんを何処に持っていこうかな♪ かな♪」


(……ん? 藤林さん、最後になんか変なこと言ってなかったか?)


(藤林さん、そういえば……石田くんを『何処に』送るとは言ってなかったわね……)


(まぁ、そんなわけで夜の心霊調査は朝倉さんと二人ですることになったわけだが……)





「うぅ……ああ、安藤くん。やっぱり、夜の校舎ってなんだがぶぶ、不気味な感じがするわね……」 ギチギチ……

「そうだねぇ……。ところで、朝倉さん。怖いのは分かるけど少し腕を緩めてくれるかな?」


(朝倉さんが俺の腕に抱き着くのはいいんだけど、胸が当たる以前に締め付けられすぎて感覚が消えてる件……) ギチギチ…… ← 抱き着いた朝倉さんが安藤くんの腕を締め付ける音


「ああ、安藤くん! 何を言っているのよ!? べべ、別に、私は怖くなんて――」


 スカーン…… ← 何かの物音


「ムギャァアアアアアアアアアアアアアアアア!?」 

「痛ッぁあああああああああああああああ!?」


(腕がぁあああああああ!? 朝倉さん! 腕! 折れる!? 折れるからあぁああ!)


「あああ、安藤くん……い、今の音は……?」

「うん、大丈夫………多分、折れてはいないと思うから……」

「もう、何なのよぉ……ッ! 学校に入ってから、変な物音がなったり……とと、突然照明が付いたりと変な現象ばっかり起こるじゃない! どうなっているのよぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


(確かに、朝倉さんの言う通り、校舎内に入ってから数々の心霊現象が俺達を襲っている。

 俺も腕の痛みで我に返らなければ、今頃は朝倉さんと同じようにビビっていたのかもしれない。だけど、俺は分かったのさ……。


『痛みは恐怖を凌駕する』


 ――ってな!)


「朝倉さん、とりあえず腕の締め付けを緩めようか?」 ギチギチ…… ← 抱き着いた朝倉さんが安藤くんの腕を締め付ける音






【次回予告】


「皆、いつも応援してくれてありがとうね。委員長よ♪

 ついに、何故かの2巻発売まで一週間! というわけで、今日から『何故かの』は発売日まで毎日更新よ♪


 それと、何故かの2巻の試し読みがMF文庫JのHPで公開されたわ。気になる人は読んでみてね♪


 さーて、次回の『何故かの』は?」


次回「モニタリング」 よろしくお願いします!


「じゃあ、いつもの『ペタリンじゃんけん』を始めるわよ。出す手は決まった? もちろん、私は決めてるわ。じゃあ、いくわよ? 

 ペタペタ・ペタりん♪  じゃん・けん・ポン♪」 



 チョキかな?



    チョキかも?



チョキじゃない?




         チョキだったりして……

















 最近じゃんけんで『チョキ』出していたかしら……?


















【チョキ!】


「クフフ……今回はちゃんと出したわよ? 

 皆のコメント、評価、待ってるわね♪」




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