第275話「成長と心配とおっぱい」


 カラ~ン♪ スカ~ン♪ 


「ありがとうございましたー! 今度はお一人様でお越しくだいませ~♪」


(ガチャ……ああ、なんて悪魔的な言葉! でも、私はガチャを回すためにバイトする日々は卒業したの! だって、私はガチャよりも大切なことに気づいたから……

 そう、それは――、


『就活』ッ!


 ぎゃぁああああああああああ! 気づいたらもう十一月じゃん! 私ったらもうすぐ大学も卒業するのに就活のこと全然考えてない! ……てか、ここ最近は『彼氏欲しい』とか『ガチャ回したい』とか『やっぱり、彼氏欲しい』とか『ガチャ回して我慢するか』とかしか考えてなかった所為で大学の講義すらおろそかにしてたから、就活以前に単位がヤバすぎて大学を卒業できるかすら危ういんだけど!?

 だから、本当はバイトとかしている暇もないんだけど……


『バイト辞めて就活に専念しなきゃ! まずはリクルートスーツを買わないと……

 って、リクルートスーツってこんなに高いの!? ヤバい……ガチャの回し過ぎでお金が無い……』 


 ――って、わけで就活の資金が必要だからバイトを止められないジレンマ!

 うぅ……それに、就活すると必然的に交通費や諸々のお金もかかってくるからやっぱり、バイトは止められないし、結局ストレス発散でガチャも回しちゃうし――)


 カラ~ン♪ スカ~ン♪ 


(ハッ! お客さんだ! 良い会社に就職して、将来有望なエリート男子をつかまえるためにもバイト頑張らなきゃ!)


「いらっしゃいませー! お一人様はこちらの席へどうぞ~♪ カップルはそこら辺の適当な席へ勝手にどうぞ~♪」


「……安藤くん、毎回来るたびに思うのですが、このお店の接客態度は一体どうなってますの? 客に対して失礼過ぎですわ!」

「姉ヶ崎先輩……。多分、あの接客はお店側の作った『キャラ』ですよ。だから、怒るのはお門違いです」


(じゃなきゃ、普通にあんな接客はまずありえないだろう。それに、この店ってあの店員さんの接客が見たくて来ているって常連もいるみたいだしなぁ……)


「安藤くん、キャラとはどういうことですの?」

「えーと……つまり、店側が店員に演じさせているってことですよ。ほら、姉ヶ崎先輩だって他の人の前では巨乳(偽)で優しい(偽)の(エセ)お嬢様キャラを作ってるじゃないですか。あれと同じってことです」


「なるほど……つまり、安藤くんは死にたいのですわね♪コォ~ロォ~スゥウ~♪


「おい、や、止めろ! このペッタンコ! マフラーは人を絞め殺す道具じゃありません! って、習わなかったのか……ッ!?」

「安藤くんの方こそ……っ! 女性レディーの腕をむやみに触るのは痴漢だと教わりませんでしたの……くっ! いい加減にわたくしの手を放しなさいですわ!」

「誰が放すか! だって、俺が手を放した瞬間にそのマフラーで俺の首を絞めるつもりだろ!?」

「折るのがご希望とあれば……っ! そのようにしてさしあげて――」


お~きゃ~くぅ~さーまぁ~ぁぁあ”お~ま~えぇ~らーぁ~ぁぁあ!!!……?」


「「…………っ!?」」


((――ッ! 殺気……っ!?))


「どうぞ、あちらのお席にさっさと座りやがれ♪」

「「あ、ハイ……」」


(店内で席にも座らずいつまでもマフラー二人で首に巻いてイチャコラ見せつけてんじゃねぇーぞ! 何が……


『キャッ! 皆が見てるわ……恥ずかしいから、手を放して!』

『ハッハッハ! 何を言っているんだいハニー♪ 俺が君の手を放すわけないじゃないか? そう、一生ねキラーン!

『ダ、ダーリン……! 素敵! 一緒のマフラーで心も体もアツアツですわ♪』


 ――じゃコラ! 甘すぎてヘドが出るわ! ペッペッ!!)


「コホン……。それで、安藤くん。そろそろ、本題に入りますが……あの子の成長の様子はどうですの?」

「そうだな……。俺の予想だと、姉ヶ崎妹の胸にはまだ成長の余地があると思うぞ?」


(まぁ、今が『C』だから――、今後の成長次第では『D』にも届きうる才能を感じるな)


「誰が『おっぱい』の成長を話せと言ったのですか!?」

「え……だって、姉ヶ崎先輩が――」

「言ってませんわよ!?」

「じゃあ、何で『あの子おっぱいの成長の様子はどうですの?』何て聞いたんだよ!?」

「わたくしが言ったのは生徒会メンバーとしての成長です! 決して妹の『おっぱい』の成長なんて気にしていませんですわ!」


(ほ、本当に……これっぽっちも気にしていませんですわよ……?)


「と言いながらも……自分のパッドを見つめる姉ヶ崎先輩の成長は絶望的なまでに『Fランク』だったのだ」 ボソ


(胸は『AAA』なのに成長は『F』とか……プププ!)



怨怒怨怒怨怒怨怒怨怒怨怒怨怒怨怒怨怒怨怒コォォオオオルォオオオオオスルゥウウウウウウウウ!」


「うぁわあああああああああああ!? 止めろペッタン……いや、ペッタンさま! やめてください! お願いします! シャーペンは危ないって! てか、シャーペンは人を刺す道具でもないし、三刀流で構える武器でもねぇから!?」


お~きゃ~くぅ~さーまぁ~ぁぁあ”お~ま~えぇ~らーぁ~ぁぁあ???……?」


「「…………っ!?」」


((――ッ! この殺気はきは……っ!?))


「当店での痴話喧嘩は犬も食わないのでご遠慮ください♪」

「い、いや――これは痴話喧嘩じゃなくて殺人未遂で……」

「そうですわ! わ、わたくしがこんなぼっち相手に痴話喧嘩なんて――」


私には喧嘩をする異性もいませんが?うるせぇえ! 黙れ!」 孤独!ドンッ!


「「……す、すみませんでしたですわ」」


(まったく! 安藤くんのせいで恥ずかしい思いをしたじゃないですの!) ← アイコンタクトです


(はぁあ!? 元々の原因は会長が『おっぱい』の話を持ち出したからだろう!) ← アイコンタクトです


(おっぱいの話を持ち出したのは、安藤くんですわよね!?) ← アイコンタクトです



「すげぇ……あの店員。あれだけイチャコラ? してたカップル? を一言で黙らせやがった……」

「フッ、お前さん。この店は初めてかい? だったら、この店にカップルで来るときは気をつけな」

「なんだ? あの店員はそんなにすごい人なのか?」

「……ああ、幾たびの職場を超えて一人、


 ただ一度の欠勤もなく、


   ただ一度の有給もなし、


 彼女はつねに独り……


 クリスマスの日もレジを打つ、


 ならば彼女のイブに意味は不要ず、


 彼女の体は――、



 無限のシフトで出来てた。



 そうして、呼ばれるようになった彼女の名が『カップル狩りのソロ』……。

 巷では有名でね。この店にカップルでやってくる客はあの高校生くらいさ」


(まぁ、連れてくる女性はいつも違う女の子だけどね……)


「そんな店員クビにしろよ……。てか、そんなに詳しいアンタは一体何者なんだ?」

「フッ……ただ休憩中のしがないマスター店長さ。

 この店、人が足りなくてね。彼女みたいに土日祝日働いてくれる子は貴重なんだ。

 彼女、お客さんがカップルじゃなければ良い子なんだけどねぇ……」


 カラ~ン♪ スカ~ン♪ 


「いらっしゃいませー♪」


(あ! お客さんお一人様だ! スマイル、スマイル~♪)






【次回予告】


「……主人公より、モブの出番の方が多くないかしら?

 皆、いつも応援してくれてありがとう! 委員長よ♪

 さーて、次回の『何故かの』は?」


次回「ワードウルフ」 よろしくお願いします!


「じゃあ、いつもの『ペタリンじゃんけん』を始めるわよ。出す手は決まった? もちろん、私は決めてるわ。じゃあ、いくわよ? 

 ペタペタ・ペタりん♪  じゃん・けん・ポン♪」 



 グーかな?



    パーかも?



チョキじゃない?




         グーだったりして……

















 本当はパーを出してくるかもしれないわよ……?


















【グー!】


「皆のコメント、評価、待ってるわね♪」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る