第257話「殿堂入り」
「それで、委員長。話って何さ?」
「この後、お姉ちゃんと約束があるんで、巻きでお願いしたいんですけどぉ~
「……安藤くん、本当にこの子が生徒会の代表でいいのかしら?」
「心配するな。姉ヶ崎はこれでもしっかりしているぞ」
「せ、センパイ……」
(もう、何言っちゃってるんですかぁ~♪)
「少なくても、俺がやるよりはな!」
「それは……確かに言えているわね」
「センパイぃ……」
(……って、そういう意味ですかぁーっ! もう、勘違いしちゃうじゃないですか!)
(まぁ、本人はふざけているが姉ヶ崎は意外と根が真面目な奴だから大丈夫だろう)
(まぁ、安藤くんはこう言っても、冗談や意地悪で人に責任を押し付けるような度胸は無い男だから、安藤くんが『心配するな』って言うのなら大丈夫なんでしょうね……)
「話って言うのは文化祭のメインイベントの一つ……『ミスコン』についてよ」
「「ミスコン……?」」
「ええ、この学校では毎年文化祭のイベントの一つとして、ウチの学校で『学校一の美少女』を決める『ミス南高コンテスト』略してミスコンが開かれているのよ……って、安藤くん……? 貴方は去年もこの学校にいたんだから知ってるんじゃないの?」
「いやいや……『ぼっち』の俺がそんなイベント知っているわけないじゃん」
(むしろ、何で委員長はそんな知ってて当然って顔なんだよ?)
「はぁ……その調子じゃあ、安藤くんは知らなさそうね……。ねぇ、安藤くん? 貴方は去年のミスコンの優勝者が誰だが分かるかしら?」
「だから、そんなの『ぼっち』の俺が知るわけないじゃん?」
「貴方は自分の彼女が何て呼ばれているか忘れたのかしら……」
「え、委員長……それって、もしかして?」
「そうよ。朝倉さんが去年のミスコン優勝者よ。だからこそ、彼女は『学校一の美少女』って呼ばれているの」
「え、あれって周りが勝手に言っているわけじゃなかったんだ……」
「まぁ、朝倉さんの場合は例年三年生が優勝してたミスコンで、初参加の一年生が圧倒的投票差で優勝したのもあるのよね……」
(私も去年のミスコンは見てたけど、例年ミスコンは一位から五位までの順位を発表するのに、去年は朝倉さんの優勝しか発表されなかったから、実は朝倉さんに全ての票が入っちゃって、二位以下が全員0票だったんじゃないか? って噂もあるのよね……)
「それで、そのミスコンがどうしたんですかぁ~?」
「あぁ、ゴメンなさい。安藤くんの所為で少し話がそれちゃったわね」
「さらりと話がそれた原因を俺に擦り付けないでくれるかな……?」
「話って言うのはそのミスコンのことよ。貴方達、生徒会にはこのミスコンの参加者を集めて欲しいのよ」
「参加者?」
「集めですかぁ……?」
「ええ、残念なことに今年のミスコン参加者がまだ誰も決まってないのよ。例年だと参加者集めは生徒会の仕事だったみたいだし、お願いできるかしら?」
「参加者集めって……そもそも、参加を希望する奴がいないならミスコンを中止すればいいじゃないの?」
「それが出来れば貴方達に頼まないわよ……。わたしも最初は先生にそう言ったんだけど、ミスコンは文化祭の伝統だから中止はしたくないらしいのよね」
「ああ……確かに、ミスコンがなかったら文化祭って特に目玉的なもの無いもんなぁ……」
「それに、体育祭は学校内の生徒が楽しむ行事だけど、文化祭はそれとは違って学校外の来客者に向けたイベントよ。特に来年この学校を受けるかもしれない中学生も参加するからそういう花形イベントを中止にはしたくないんでしょう」
「確かに、文化祭って受験する高校を決める判断材料の一つになりますもんねぇ~
「…………」
(え、そうなの……? 俺、普通に家から近いってだけでこの高校に決めたけど……? 文化祭とかむしろ、今年初めてあるの知ったくらいだよ?)
「と言うわけで文化祭が始まるまでに、ミスコンが開催できる最低人数として……十人の参加希望者を生徒会で募集するなりスカウトするなりして決めてきてくれないかしら?」
「じゃぁ、まずは委員長をエントリー……っと!」
スッカーン! ← 委員長の右ストレートが安藤くんの顎にクリティカルヒットした音
「安藤くん! 貴方、ぶっ飛ばされたいのかしら……?」
「もう、既に殴られた気がするのは気のせいですかねぇ……?」
(まぁ、確かに委員長はミスコンとかに出たがるタイプじゃないよな……)
「なら、とりあえずは朝倉さんに頼んでみるか」
「そうですねぇ~、センパイが頼めばイチコロで引き受けてくれそうですもんねぇ~
「安藤くん、残念だけどそれは出来ないわ」
「え! 委員長、何で?」
「朝倉さんは去年の票数が圧倒的だったという理由で去年のミスコンで殿堂入りしているのよ。だから、朝倉さんはもうミスコンには参加できないのよ」
(じゃないと、他の女の子が朝倉さんと比べられるのを嫌がって、余計ミスコンに出たがらなくなるのよね……)
「じゃあ、ガチで十人集めるんですかぁ~? はぁ……なんだか、文化祭って思ったより楽かもとか思ったんですけどねぇ~」
「こういうイベントって自分から出たがる奴いなさそうだし、十人も集めるのは少し大変そうだなぁ……」
「もし、集まらなかったら姉ヶ崎さんは責任をもってミスコンに参加してもらうからね?」
「何でアタシなんですかぁーっ!?」
「だって、今回の生徒会の代表は貴方なんでしょう? それに、いくら私でも責任をもって安藤くんをミスコンに出せなんて言わないわよ……」
「俺だってお断りだよ!」
「アタシのかわりでセンパイだけが傷つくなら別にいいじゃないですかぁーっ!」
「おいコラ! そこの後輩!」
「姉ヶ崎さん……。いい、よく想像しなさい?
女装した安藤くんを……うげぇ」
「てめぇ、コラ! 委員長!」
「うぶぅ……委員長センパイ変なの想像させないでくださいよ……。でも、よく分かりました。確かに、センパイを女装させて一番傷つくのはそれを見たアタシ達ですね……」
「姉ヶ崎さん、よく分かったわね……正解よ」
「今、この話の流れで一番傷ついたのは間違いなく俺だけどな!」
【次回予告】
「皆、いつも応援してくれてありがとう! 委員長よ♪
さて、やっと【ミスコン】の話に入れたわね。え、タイトルが予告と違う? 細かいことはいいのよ。
さーて、次回の『何故かの』は?」
次回「参加者」 よろしくお願いします!
「じゃあ、いつもの『ペタリンじゃんけん』を始めるわよ。出す手は決まった? もちろん、私は決めてるわ。じゃあ、いくわよ?
ペタペタ・ペタりん♪ じゃん・けん・ポン♪」
グーかな?
パーかも?
チョキじゃない?
グーだったりして……
本当はパーを出してくるかもしれないわよ……?
【パー!】
「皆のコメント、評価、待ってるわ♪」
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