第157話「生徒会のメンバー」
(あの選挙から一週間……引継ぎもようやく終り、今日から『新生徒会』がスタートだ)
「てか、マジで俺なんかに生徒会長できるかな……」
「大丈夫よ! 安藤くんは私が全力でサポートしてあげるんだから!」 スカスカ!
「フン! 今からそんな弱気な事を言ってどうする? 大体、キミは精神も体も弱すぎぞ! 選挙が終わった翌日から風邪なんか引いて、学校に来たのも僕達が引継ぎを終えた後じゃないか。まったく……そんな事では姉ヶ崎先輩のような立派な生徒会長にはなれないぞ」
「まぁまぁ……石田くんも落ち着いてね? ほら、安藤くんだってプレッシャーとかいろいろあるんだよ。ね?」
「アハハハ~! 先輩達ってばチョーバラバラでマジウケるんですけどぉ~♪
てか、そろそろ新生徒会の挨拶の時間ですけど移動しなくていいんですかぁ~?」
「ああ、そういえばそうだな……じゃあ、行くか」
(――てな、訳で生徒会長選挙は無事に俺が当選する事が出来たけど、その後が大変だったなぁ……
あの選挙が終わった後、スピーチでなれない真似をした所為か……後から羞恥心とかプレッシャーとかいろいろな感情に押しつぶされて、石田の言ったとおり見事に風邪を引いて寝込んじゃったからな。
まぁ、生徒会の引継ぎに関しては朝倉さんが俺の変わりにその全てを引き受けてくれて残りの生徒会メンバーも朝倉さんが俺の変わりに決めてくれたけど、その中で一つだけ予想外だったのが――
そう『後輩ちゃん』こと、姉ヶ崎妹のことだ。
あの偽パット(姉ヶ崎先輩)が、今回の選挙に自分の妹を『会計』に立候補させていたなんて……しかも、その妹ってのが俺の演説の時に来てくれたあの『後輩ちゃん』だって事が分かって、さらにビックリだよ!
元々、会長以外の生徒会メンバーは立候補可能だけど、選挙事態は生徒会長の
枠しか行わないから、生徒会メンバーの決定権は生徒会長になった俺にある。
だから、生徒会長は他のメンバーを立候補者から選ぶか、自分で好きなメンバーを選んでもいいのだけど――俺が風邪で休んじゃったから、朝倉さんを副会長に指名し他のメンバーの決定権を朝倉さんに渡していたわけで……
さて、その朝倉さんがあの偽パット(姉ヶ崎先輩)の妹である『後輩ちゃん』の立候補を無視できるだろうか?
できる訳が無い……その結果、出来た新生徒会のメンバーが――
【生徒会長】
・俺
【副会長】(二名)
・朝倉さん
・石田
【書記】
・藤林さん
【会計】
・後輩ちゃん(姉ヶ崎妹)
――の、計5名。
前生徒会は副会長が石田の一人だけだったらしいが、別に副会長は最大二名まで可能とのことだったので、他力本願をモットーにする俺としては朝倉さん、石田という二名体制を取る事で圧倒的楽をする所存でございます。
まぁ、ぶっちゃけた話、まったく新しいメンバーにするよりは元々の生徒会メンバーである石田と藤林さんがいた方が何かと助けてもらえるという朝倉さんの提案に乗っただけだけどね。
俺的には桃井さんとか委員長を誘いたかったけど、桃井さんは『部活』委員長は『そもそも興味ない』の一言で断られてしまったからな……)
「あ、ちょっとゴメン。俺お手洗いに行くから、皆は先に講堂へ移動しててくれる?」
「ええ、分かったわ。安藤くん」
(うぅ……なんか緊張したらトイレに行きたくなってきたぜ)
「……む、そうだな。すまないが、僕も一緒に行かせてもらおう」
「んあぁああ!? 何だよ、石田! 俺のマネしないでくれる? 男と一緒にトイレとかなんか勘違いされそうじゃん!」
「なっ……ば、馬鹿者! 僕は別にキミのマネをしているわけじゃない! これは純粋な生理現象だ!」
「キャハハ~先輩達マジでウケるんですけどぉ~」
「ねぇ、朝倉さん」
「何かしら、藤林さん?」
「私、あの二人って意外と仲良くなれると思うんだよね」
「うふふ、奇遇ね。私もそう思うわ♪」
(いやいや、朝倉さん。それは絶対に無いから!)
「おい、安藤」
「……なんだよ。石田」
「この後の新生徒会長の挨拶だが、気をつけた方がいい」
「気をつけるって……何を?」
(石田の奴、わざわざトイレに付いて来たと思ったら、本命はこの話をするためか?)
「新聞部のゲス谷だ。新生徒会長の挨拶は新聞部だけ記事の取材として、特例で質問が認められている。そして、新聞部は例年その質問の回答を悪意のある解釈をして、新生徒会を批判する記事を掲載するんだ。だから、奴らは今回もその質問で何かを仕掛けてくるはずだ。特にゲス谷は『あの写真』のことを根に持っているはずだからな……」
「本当にロクでもねえな新聞部……でも、そんな批判されるような質問てあるか?」
「まぁ、キミの場合だとスピーチの時に掲げていたマニフェストだな。あの時、キミは『全トイレのウォシュレット設置』に加え、その場で『全教室のクーラー設置』や『女子のひざ掛け持込許可』など好き勝手な政策を約束してくれたからな……十中八九その政策の具体的なプランを聞いて、その穴を記事で批判してくると思うぞ」
「あぁ~」
(そういえば、土壇場でいろいろ言ったなぁ……確か選挙の時に言ったことって守らないとヤバイんだっけ?)
「でも、そのことなら大丈夫だ。一応、俺にもちゃんと考えはある」
「そうか……まぁ、それなら僕はいいんだ」
「しかし、あれだな。お前って意外と俺の心配してくれてんだな。正直、俺は朝倉さんがお前を副会長に指名した時も断られると思ってたよ」
「ば、馬鹿者!? 別に、僕はキミのために言ったわけじゃ無いからな! こ、これは……そう! 生徒会長のキミがだらしないとこの学校の生徒が大変な思いをするから、その分僕がしっかりしないといけないと言うわけで!」
「はいはい、ツンデレ乙」
「つ、つんでろ? 何だそれは! どういう意味だ!」
(さて、そろそろ、行かないと……朝倉さん達も待っているしな)
カラカラカラ~
ジャー
バタン! ← トイレのドアを開ける音×2
「「ふぅ……」」
バシャバシャ~ ← 手を洗う音×2
「「……よし!」」
スタスタスタ……バタン! ← トイレから出て行く足音×2
『以上が、新生徒会のメンバーでした~』
「「「キャー、メガネちゃーーん!」」」 ←観客の生徒達
「…………」
(てか、何でメガネちゃんは当然のように司会をしているんだろう……あの先輩が卒業したら、あの司会のポジションって誰かが引き継ぐのかな?)
『では、最後に新生徒会を代表して、新生徒会長から一言、挨拶をしてもらいます』
(よし、俺の出番だな)
「ぇー……ども、生徒会長になった安藤です。がんばります」
『…………え!? お、終わりですか?』
「え、そうだけど?」
(一言って言ってたから、これでいいんだよな?)
「本当に一言で終らせちゃう安藤くんも最高にクールだわ!」 スカーン
「あの馬鹿者が! 本当に一言で終らせる奴がいるかぁあああ!」
「石田くん! お、落ち着いて……朝倉さんは――もう、手遅れなのかなぁ……?」
「キャハハハ~! 先輩マジでヤバイんですけどぉ~♪」
『……あ、は~い! では、挨拶も終わったので、最後に好例の新聞部から新生徒会長への質問コーナーに移りたいと思いまーす♪
では、代表のゲス谷さん。質問をお願いしまーす』
「ゲェースゲスゲス! では、新聞部を代表して……この僕チンが質問させてもらうでゲス。
ズバリ! 新生徒会長の安藤くんはスピーチの時に政策としてで『全トイレのウォシュレット設置』、『全教室のクーラー設置』に『女子生徒のひざ掛け持込許可』などを約束していたでゲスが……これらの公約の具体的な計画プランを聞かせほしいでゲス! 特に後者二つの政策に関してはもうすぐ十月になって寒くなる前にどれだけ実行できるのか? そして、それらの政策もたった一年の任期の間に実行できるのか? という意見も含めてお答えいただけると嬉しいでゲスね……」
「クソ、ゲス谷め……やはり、僕の予想通りその部分を質問で付いてきたか……」
(そもそも、これらの政策には学校への許可や資金の確保など直ぐに実行できるものではない。普通に考えて実行できても設置は来年以降だ。でも、今の質問だと事情を知らない他の生徒は今年中に設置できないと生徒会の怠慢だと思われる危険性がある……安藤、キミは一体なんて答えるつもりなんだ?)
『では、新生徒会長の安藤くん、新聞部の質問に対する返答をお願いします』
「はい……」
(なるほど、確かに石田の言ったとおりの内容の質問が来たな……しかし、俺もなんの考えも無しにあれらの政策を言っていたわけではないのだよ。
フッフッフ……実はこう言う事もあろうかと――あのクソ親父から、何か追求された時の『秘訣』とやらを聞いておいたのさ!)
「確かに……俺はスピーチの時にそれらの『マニフェスト』を掲げた……そして、俺が生徒会長に当選した以上、これらのマニフェスト、政策は全て事項……する!
するが…………俺は今回、それらのマニフェストに対して、実行の『時期』と『順番』の指定まではしてない。
そのことをどうか皆に思い出して欲しい……」
「「「え……え…………」」」 ←観客の生徒達
ざわ、ざわ……
ざわ、ざわ……
ざわ、ざわ……
「つまり――生徒会長の俺がその気になれば…………マニフェストの実行は一年ごとに一教室づつ……または十年、二十年ごと、ということも可能だろう…………と、いうことを!
だがしかし、安心して欲しい…………
マニフェストは必ず――実行する! 俺が任期の間に計画の決定までは約束しよう! ただ……その実行が『少し』先になるというだけの…………ことである。
その証拠に、皆に良い知らせをお伝えしよう!
最初に掲げた『全トレイのウォシュレット設置』だが…………今回めでたく最初のウォシュレット設置場所のトイレが決定した……
その場所は――生徒会室前の廊下のトイレだ! ウォシュレット設置の工事は来週を予定している……
他のトイレのウォシュレット設置や教室のクーラー設置についても『順次計画中』だ……
是非、皆には期待して待っていて欲しい……」
(うおし、これで完璧だな! まず、親父に聞いたアドバイスの『直ぐのマニフェスト実行は無理なこと』と、そして『マニフェスト実行の意思はあること!』を伝えた! さらに、説明の仕方も親父が生徒会長だった時の経験や、この前読んだラノベの弁明シーンを参考にしたから完璧――)
「「「ふ……ふざけるなぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」」」 ←観客の生徒達
「生徒会長は辞任しろー!」
「生徒会は解散しろー!」
「リコールだ! 生徒会のリコールだ!」
「生徒会長は朝倉さんと別れろー!」
「えぇぇええ! 何故か、すごい不評なんだけどぉおお!?」
「あ! 安藤くん『中間管理職カネガワ』の最新刊を読んだのね!」 スカーン
「あの……馬鹿者がぁああああ! 安藤ぉおおおおおお!」
「石田くん! お、落ち着いて……そんなに叫んでばっかりだと喉痛めるよ?」
「キャハハハ~! 先輩マジでヤバイんですけどぉ~♪」
(こうして、生徒会史上――もっとも『生徒からリコールされた』という生徒会が誕生したのだった……)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます