第148話「報酬」



「ゲス谷。せっかく、俺が忙しいぼっち飯を切り上げて、インタビューに答えてやったんだ。当然、何か報酬はもらえるんだろうな?」

「報酬でゲスか? なるほど……ちなみにどんなのをご所望でゲスかね?」

「そうだな……その写真とかはどうだ? 当然、データはそっちのカメラにあるんだろうから、その写真を渡してもまた印刷できるだろ?」

「な! 安藤、お前はその写真を手に入れてどうするつもりだ!?」

「なぁ~に、面白そうだからもらうだけだよ。こいつがあれば石田が嫌がるだろうしな」

「貴様って奴は……」

「ゲェース、ゲスゲス! 僕チンは安藤くんみたいな人嫌いじゃ無いでゲスよ? 良いでゲス。安藤くんの言うとおり、このカメラの中にデータはあるでゲスから、この写真は安藤くんに報酬としてあげるでゲス」

「サンキュー♪」

「安藤、それを僕に渡せ!」

「嫌だよ。これは俺が新聞部からもらった正当な報酬だ。この写真がどんな経緯で撮られたものであろうと、俺が正当な手順で手に入れた報酬をお前が没収するのは『正しい行為』とは思えないけどなぁ?」

「ぐぬぬ……貴様、よくもそんな事をぬけぬけと!」


(あぁーやっぱり、石田って藤林さんの言うとおり『正しいこと』にこだわるな。まぁ、そんなんじゃゲス谷に口で勝てるわけないわけだ)


「ゲスゲス! それじゃ、僕チンはこれで――」


「あぁーっと! いけない、急に足が滑ってたぁああ――

 オラッアア!」

「ゲェスゥウ――っ!?」


「な……安藤!? 急にゲス谷にとび蹴りなんてしてどうした!?」

「え、とび蹴り……何のこと? 石田、俺はただ足が滑って転んだだけだぞ?」

「いてて……ちょっと、安藤くん! 何で急に僕チンに向かって仮面ラ○ダーもビックリのジャンプキックをお見舞いして来たんでゲスか!?」

「いや、だから事故だって。ゴメンゴメン」

「まったく! 今ので大事なカメラが壊れたら……って、カメラが無いでゲス!?」

「ゲス谷、安心しろ。カメラなら落とすと危ないと思って俺がちゃんとキャッチしておいたぞ」


(まっ、本当はこのカメラを手に入れる為にわざと転んだフリして、ゲス谷にとび蹴りをお見舞いしたんだけどな……)


「安藤くん、でかしたでゲス! いや、元々は安藤くんの所為でもあるような……? とにかくそのカメラを僕チンに返すでゲス!」

「おう! 今すぐに返――あぁーっと! いけない、またまた急に足が滑ってたぁああ――石田、パス!」


 ポイ♪ ←カメラ 


「むぅ!?」


(安藤! 何故、僕にカメラを投げ渡す!?)


「うぎゃあぁああああああ!? よりにもよって、僕チンのカメラが副会長の手にぃいいい!? ちょちょ、安藤くん! 何をしてくれてるんでゲスか!?」

「いや~ゴメン、手が滑っちゃった」 テヘペロ♪

「今すぐにそのぶん殴りたくなるような表情を止めるでゲス! 手が滑ったなんてあからさまな嘘を……そうでゲスか、君は元々副会長の味方をするつもりでこんな真似をしてくれたんでゲスね!」

「安藤、貴様それは本当か!?」

「はて、何の事かなー?」

「惚けても無駄でゲス! そっちがそのつもりならさっきの取引は無効でゲス! さぁ、さっきの写真を僕チンに返すでゲス!」

「はぁ? ゲス谷、お前何言ってるの……? この写真は『俺が新聞部からもらった正当な報酬』だろ? 確か、お前もさっきそう認めた気がするが……なぁ、副会長。この写真がどんな経緯で撮られたものであろうと、俺が正当な手順で手に入れた報酬をこいつが没収するのは『正しい行為』と思うか?」

「ゲス!? そ、それは……」

「安藤……」


(貴様、本当に?)


「フン、そうだな。安藤の言うとおりそれは『正しくない』要求だ。ゲス谷、その写真は諦めるんだな」

「げ、ゲスぅ~……」

「ああ、それと、このカメラは僕が『生徒会』として没収させてもらう。安心しろ、ちゃんと手続きを踏めば返してやる。まぁ、中身の確認はさせてもらうがな……?」



「そ、そんなぁー!? あんまりでゲスぅーうう!」



「おぉ~ゲス谷の奴、まるでアニメに出てくる敵役みたいなスピードで逃げて行ったな」

「そうだな。それより、安藤。貴様、何で僕を助けるような真似をした?」

「何だよ……そんな事に理由なんて必要か?」

「当たり前だ! 貴様はただの善意でこんな行動をする男ではないはずだ! 僕の中のお前なら、僕の味方をするより、奴の仲間になって僕を陥れていたはずだ!」

「お前の中の俺ってどれだけ卑怯者なんだよ……いや、てか別にお前の味方をしたわけじゃないし、そこん所勘違いしないでくれる?」

「じゃあ、なおさら何故、僕を助けた!」

「あぁ……そうだな」


(うわぁ、石田の奴めんどくせぇ~別に、理由とかいいだろ。助かったんだから素直に喜べって言うんだよ……ったく)


「だから、特に理由なんてねぇよ。でも、しいて言うなら……」

「何だ?」


「『ゲス野郎』と『巨乳の女の子』どっちかを助けるとしたら、誰だって『巨乳』を選ぶだろ? そう言う事だよ」


「貴様、まさか藤林の為に――」

「…………」


(たっく! こんな恥かしいこと言わなくても分かれよな)


「じゃあ、昼休みも残り少ないし、俺はこれで――」

「安藤、待て!」

「……何だよ」


「僕は少しお前を勘違いしていたのかもしれない……だから、聞かせて欲しい。

 君は生徒会長になったら『何をなしたい』?」


「は?」

「そのままの意味だ。君には生徒会長になったとして『やりたいこと』はあるのか?」

「それは――……」


(そんなの俺には――)


「何も言えないか……フン、僕にはあるぞ!

 僕は生徒会長になったら『正しく』ありたい。この学校を『正しいこと』が当たり前のようにできる場所にしたいと僕は思っている。それが、僕にとっての『なしたいこと』だ!」

「正しく……」

「そうだ」


(つまり、こいつが生徒会長になったら姉ヶ崎先輩の『おっぱい』は正しい姿(AAA)になるということか?)


「もし、君にも僕と同じように『なしたいこと』があるなら、僕は君を『ライバル』として認めよう。話はそれだけだ」

「……そうかよ。別に、俺にはお前に認めてもらう必要も無いんでね。ああ、それと『正しくありたい』って言うなら、流石に自分の彼女に『嘘』をつかせるのは止めた方が良いと思うけど?」

「安藤!? お前、やはり知って――」

「さて、なんのことかな? ああ、あと良く考えたらこんな写真持ってても意味無いからお前に渡しておくわ。好きに処分してくれ」


(さて、これでようやく飯が食え――)


「ま、待て! 安藤」

「……って、だぁああああああああ!? 何だよ! またかよ!? いい加減にしろよ! こっちは腹がスッカ、スッカなんだよ! 話があるならこれで最後にしろよな!?」


(まったく! まだ何か言い足りないのか――)


「その……何だ、ありがとう」

「お、おう……どうも」


(――って、ツンデレかよ!?)


「じゃ、じゃあ……」

「うむ……」





(因みに、この翌日。石田はお昼の校内放送を使い、藤林さんとの交際を正式に発表した。

 そして、このスキャンダルに一番驚いたのは朝倉さんだったとか……)



「うええええええええええええええええええええええ!?

 藤林さんの片思いじゃなかったのぉーーーー!?」 スカーン……







【次回予告】


「皆、いつも応援してくれてありがとう! 委員長よ。

 さーて、次回の『何故かの』は?」


『生徒会長になったら何をしたいか?』


 突然、投げかけられた石田くんの言葉は安藤くんの心に大きな波紋を呼び起こした。

 自分の答えが見つからずに思い悩む安藤くん。

 果たして、彼の中にその答えは眠っているのか?


次回、何故かの 「答え」 よろしくお願いします!


「朝倉さんって、生徒会長になったら、したいことある?」



* 次回の内容は真面目な話になる可能性が高いので、ギャグは控えめの予定です♪




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