第145話「石田事変」



「お……怒られた?」

「うん」


(……え、石田の奴何言ってんの? 虐められている女の子に『君はバカか?』って……お前の方がバカじゃねえの?)


「あはは、やっぱり酷いよね? 私だって、当時は凄いムカついたもん『何この人!? 私だって好きで虐められているんじゃないんだよ!』ってね。

 そしたら――」



『それは僕に言う事ではないだろう? 彼女達に言うべき言葉だ』

『そ、そんなの分かってるよ……でも、言えるわけないじゃん!』

『だから、君はバカなんだ。何故、言えない? 嫌なら「嫌」と声に出して言えばいいんだ。自分の意見を自分で言えないから君はそうやって良いようにいじめられているんだぞ?』

『う、うるさい! うるさい! うるさぁああい! それでも言えないのは言えないんだよ! そ、それとも……石田くんが変わりに言ってくれるの?』

『フン! 何故、僕がわざわざ君の変わりにイジメの仲裁をしなければいけないんだ。それは君達の問題だろう? なら、自分達で解決するべき問題だ。僕の出る幕では無い』

『そんなの分かってるよ! でも……言ってもどうせ余計に虐められるだけだもん……』

『フン! 言っても虐められるし、言わなくても虐められる。だから、言わないで荒事にしない方が良いか? バカの考え方だな。なら、今の状況は君が選んだ結果と言う訳だ。やはり、僕にどうこうする権利は無いな……精々、卒業まで逃げ続ければいいさ』



「――って、言うんだよ。酷いよね?」

「あの大馬鹿野郎がぁあああああああああ! アホだろアイツ!? え、普通そこまで言うか? いや、ねえよ。流石の俺でもドン引きだよ!」

「だよねぇ……でも、そのやり取りがあった所為なのかな? その日の放課後についイジメてた子達に言っちゃったんだ『もう、止めて』って……」




『はぁ? 何が?』

『えっと……だから、その……そこ私の席だから机の上に座られるのは迷惑……です』

『え、何で? 座る時にゴメンって言ったじゃん』

『でも、机は椅子じゃないから……』

『いやいや、そんなの分かってるし。てか、何? ウチが座ると机が汚れるって言いたいの? マジ酷くない? 別にスカート履いてるから汚くないし! てか、それイジメじゃない?』

『マジうける!』

『すごーい!』

『や、そんな……イジメはそっちの方じゃ……』

『あ? 何? ウチらがイジメてるとか言いたいの? 何それ、ケンカ売ってる?』

『ヤバイ、ウチら濡れ衣じゃね?』

『たーのしーい!』

『あ……うぅ』


(ああ、もう! どうしてあんなこと言っちゃったの!? それもこれも石田くんが変なこと言った所為だよ!)


『そこまでにしたらどうだ?』


(え……石田くん?)


『は? 何、お前?』 

『僕は石田だ。フン! お前達は自分達のクラスの委員長の名前すら覚えてないのか?』

『いや、そんなの知ってるし……てか、関係ないでしょ? 男子が女子の間に入って来ないでくれる?』

『関係なら大ありだ! 僕は委員長だからクラスに揉め事があるなら対処する義務がある! それに今の時代で男女がどうこう言うのは関係ない。僕は相手が誰であろうと自分が正しいと思う事をする!』

『マジうける! 何、名乗ってるの? むしろ、委員長とか名前無くてもいいでしょ!』

『委員長って、すごーい!』

『はっ……何、熱くなってるの? ウチらただ遊んでいただけだし……藤林、そうだよね?』

『え、あ……う――』


(大変、ここで頷かないともっとイジメられちゃう!)


『だから、逃げるな! この大バカ者が!』

『――ひぅ!?』

『はぁ……だから、何なの? アンタ、ちょっとかーなーり、ウザイよ?』

『だから、僕は石田だ! それに「ちょっと」と「かなり」は意味が食い違っている! 君はもう少し日本語を勉強するべきだ』

『はぁああ――――っ!?』

『ギャハハ! 何それ! マジウケル!』

『たーのしーい!』

『大体、君はこれを「遊び」と片付けようとしたが、一般的に見ても君達の行動は配慮が足りなさすぎる! 何がスカートを履いているから汚くないだ? 君達は他人が座った机を綺麗だと思っているのか? それとも、よほど自分達が清潔だと思い込んでいるナルシストなのか? 僕は座るのが誰であろうと他人のケツが乗っかった机で授業を受けたいとは思わないぞ! それに君達は他にも行動が――』

『何こいつ!? マジでウザイしキモイし、話長いんだけど!?』

『い、石田くん!? ちょっと、それくらいでいいから! ストップ、ストップ! お、落ち着こうね? ね?』

『えええい! 止めるな藤林ぃ! 僕はまだ、コイツラに言い足りない事が山ほどあるんだ!』




「――てな、事がありまして……」

「…………何それ?」








【次回予告】


「皆、いつも応援してくれてありがとう! 委員長よ。

 さーて、次回の『何故かの』は?」


明かされた石田くんと藤林さんの出会い。そして、それは藤林さんの苦労の日々の始まりでもあった……

どうして、藤林さんは石田くんを好きになったのか?

 衝撃の事実が発覚する!


次回、何故かの 「弱い人」 よろしくお願いします!


「朝倉さんは流石だよね♪」


* 次回予告の内容は嘘予告になる可能性もあります。



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