第139話「答え」
「…………」 モグモグ
「ねーねー? おーい、安藤くーん?」
「……何、桃井さん? 正直、俺いまこの料理を制限時間以内に食べきらなきゃいけないから忙しいんだけど……?」
(持ってきた癖に食べない誰かさんの所為でね!?)
「まーまー♪ 食べながらでいいから、聞きたいことがあるんだけどさー」
「何さ、聞きたいことって?」
「正直、安藤くんって……何で生徒会長選挙に出てるの?」
「そ……それは、どういう意味?」 モグモグ
「そのままだよ。うーん、ほら! 私ってサクラの推薦人をやっているでしょ? だから、サクラがどうして立候補したのかも理由は知っているんだけど……いや、知っているからこそ何で安藤くんまで立候補しているのか不思議だったんだよねー?」
「ああ、それは……まぁ、副会長と因縁があるというか……」
「うん『その話』もサクラから聞いているよ♪」
「え、じゃあ何が疑問なの? その話を知っているなら分かるでしょう? 俺が生徒会長選挙に出ているのは『副会長との因縁』だよ。もちろん、生徒会長は朝倉さんに当選してもらうつもりだよ。でも、それとは別に俺は石田の奴と選挙でケリを付けなきゃいけないんだ」
(朝倉さんから大体の事情を聞いてるなら、こんなの聞かなくても、桃井さんなら分かると思うんだけど……?)
「うん、そうだよねー。確かにサクラもそう言ってた。でも、私が聞きたいのはねー、
その『副会長との因縁』って安藤くんが生徒会長選挙に出てまでケリを付けなきゃいけない問題なの? って事なんだよ」
「え?」
「安藤くん、知ってる? サクラが生徒会長選挙で勝つためにどれだけ大変な状況になってるか?」
「ど、どう言う事? 桃井さん……」
「あぁー……やっぱり、サクラは安藤くんに何も言って無いんだねー」
(朝倉さんが大変? え、だってこの前の支持率ではトップだったはずじゃ……)
「うーん……安藤くん、私今から食後の運動ついでに、少し長い『独り言』を言うから出来れば気にしないで欲しいんだけどいいかなー?」
「え……あ! うん、分かったよ。桃井さん」
(つまり、本来は敵陣営である俺には話せない内容の話ってことか……いや、この場合は『独り言』か……)
(よし、伝わったみたいだね)
「うん……実はいまサクラの陣営ってある意見で二つに分かれちゃってるんだよねー」
「え、その意見って――まさか!」
(そんなの初耳だけど!? いや、でも朝倉さんには生徒会長がいるもんな……だとしたらその『意見』なんて一つしか……)
「うん、その意見はサクラが当選した場合『安藤くんを生徒会に入れるか?』だよ」
「やっぱり、あのペッ――じゃなくて、生徒会長が?」
「『ぺ』……? ううん、生徒会長はサクラの味方だよー? まぁ、分かれちゃっているって言っても『安藤くんを生徒会に入れるべきじゃない』って言っているのは三年生の数人だけなんだけどね。それに、生徒会長はサクラの希望を考慮するって言ってくれているし、そんなに安藤くんの生徒会入りが絶望的って話じゃないんだよー」
「そ、そうか……」
(いや、でもその状況は思ったよりヤバイな……桃井さんは会長が朝倉さんの味方をしているって言ってたけど、多分それは会長の演技だ。あの腹黒ペッタンコ生徒会長のことだから、自分は味方のフリをして生徒会の息がかかった三年生に俺の生徒会入りを反対させているに違いいない。朝倉さんに言っていることもあくまで『希望を考慮する』だから、この話を聞いた感じだと、朝倉さんが当選した時に『考慮したけど無理でしたわ』とか言い出しかねない……)
「でもね、やっぱりこうして味方の中で意見が割れちゃうと思ったより票が集まらなくてねー、この前の討論会はサクラの活躍で一時的に支持率は上がったけど、それも今だけだと思うなー? それに、何故か三年生の票が思ったより集まらないんだよ。私が思うに安藤くんの生徒会入りを反対している三年の人達が呼びかけているとは思うんだけどねー。それで、最近では生徒会長も当選したら安藤くんの生徒会入りはちゃんと考慮するから、安藤くんに立候補を取り消させたらどうか? って話までサクラに来てるんだよ。知らなかったでしょー?」
「うん……」
(なるほど、だから『何で生徒会長選挙に出てるの?』か……つまり、石田なんかとの因縁に囚われて朝倉さんともども落選するより、俺が選挙を辞退して朝倉さんの陣営に生じている問題を解決した方が良いと桃井さんは言いたいんだろうな……)
「因みにだけど、朝倉さんは何て答えたの?」
「『それは私が決めることはないので♪』だってー、生徒会長は『副会長との事は私が何とかしますわ』って言っているのにねー? だから、私はサクラがそこまで言うほどの『理由』が安藤くんにあるのか知りたかったんだよねー。だって……
『知らないで後悔するよりも、それを知ろうとする方が私らしい』でしょ♪」
「桃井さん……」
(何を言ってんだ俺は……桃井さんは俺に立候補を止めるように言おうとしたんじゃない。俺に『この事』を知らせてくれたんだ。過去に俺が桃井さんの『無知』を後悔しなくていいといったように、桃井さんは俺が『無知』だった所為で後悔する事が無いように『この事』を教えてくれた。なら、あとは――
『知ったことをこれからどう活かすか』だな)
「安藤くん、どうかなー『答え』は出た?」
(『答え』か……そんなの簡単だな)
「理由なんて単純だよ……『約束』したからね。ほら、約束って破ったらラノベ千本飲まされちゃうから」
「えぇー!? 何それぇー? アハハハ! ラノベ飲まされるとか変だよー!」
「俺と朝倉さんではそうなの……てか、桃井さん一応は敵陣営の俺にこんな情報を教えてよかったの?」
「えー何のことかなー? 私はただ『独り言』を言っていただけだよー? それに……もしも、安藤くんが生徒会長になったら面白そうだしねぇー♪」
「いやいやいや、そんな『もしも』は天地がひっくり返ってもあり得ないから……無理でしょ?」
「えー! なんだつまんないのー……ちぇっ、安藤くんが生徒会長になったら、この恩で学校の学食を食べ放題にしてもらおうと思ってたのにー! ぶぅー!」
「いや、生徒会長になれても桃井さんがいる限りは絶対にしないからね……?」
(HAHAHA! 何を言っているんだこの爆食おっぱいは? そう言うのはこのテーブルに残った料理を食ってから言おうか?)
【次回予告】
「皆、いつも応援してくれてありがとう! 委員長よ。
さーて、次回の『何故かの』は?」
朝倉さんの現状を桃井さんから聞いた安藤くん。打開策を考えるため、彼はある人物に相談(丸投げ)を持ち掛けるのだった!
次回、何故かの 「マイナスイメージ」 よろしくお願いします!
「ええ、私にいい考えがあるわ」
* 次回予告の内容は嘘予告になる可能性もあります。
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