第123話「越後屋 」
「公開討論会!? って――委員長、何それ?」
「安藤くん、貴方ね……一年生の時の生徒会長選挙は覚えてないの?」
「「全然!」」
「山田と一緒になって威張って言うんじゃないわよ! まったく……」
「そう言われても一年の時なんか生徒会なんぞにこれっぽっちも興味なかったし、山田もそうだろ?」
「おう! てか、そんな行事あったか?」
「あったわよ! いい? 『公開討論会』って言うのはその名の通り、生徒会長選挙の立候補者達が学校の講堂に揃って、全校生徒の前でどういった活動をして学校を良くするかを議論するのよ」
「てか、それってなんかの意味あるの? そもそも『ぼっち』の俺からしたら学校の講堂で全生徒の前に立たされるとか一種の拷問なんだけど……」
「だははは! 確かに、安藤ってそういうの苦手そうだな! そもそも、まだ生徒会長に選ばれてないのにそんな事をやっても意味無いんじゃねーの?」
「…………」
(人がせっかく説明しているのに、こいつ等は本当にちゃんと聞いているのか不安になるわね)
「意味ならあるわよ。これは安藤くんにとっては凄いチャンスなのよ? この『公開討論』は一種の選挙パフォーマンスなのよ! これに参加することで『安藤くん』という立候補者の存在が嫌でも全生徒に知れわたるんだからね」
「ああ、なるほど……確かに俺は立候補しているけど、生徒の中には『俺』という立候補者の存在を認知していない奴もいるのか……」
「そうか! 安藤は『ぼっち』だからな!」
「うるさい。山田、黙ってろ!」
「そうよ。だからこそ、私達はこのチャンスを逃すわけにはいかないのよ。それに、この討論会で生徒達は各立候補者達の特徴をつかむことも出来るわ。もちろん、討論会で言い負かされたり失言をすれば支持率は下がるかもしれないけど……」
「逆に、目立つ事が出来れば支持率を伸ばすことも出来る……と?」
「そうよ。どうやら、分かってきたようね」
「ああ、何となく理解できた」
「うん! 俺も理解できたぞ! つまり、メチャクチャ大きい声を出せばいいんだろ? よっしゃ、任せておけ! 当日は俺が最大威力の歌声を皆に届けるぜ!」
「うるさい。山田、黙ってろ」
「どうやら『安藤くんは』分かってきたようね」
「ああ『俺は』何となく理解できた」
「ん!? ん? どういうこと……だ?」
「山田、すまない……ちょっと、真剣な悪巧みがしたいけど、お前が邪魔田だから、少しの間だけ外に――じゃなくて、さっき吉田がお前と野球がしたいって嘆いていたぞ? 今日はもうお前は用済みだし、吉田の所に行ってやれよ」
「マジで!? よっしゃ! じゃあ、俺吉田の所に行ってくるわ!」
ガラガラ~
「吉田ぁ! 野球しようぜ!」
「安藤くん……貴方、なんか山田の扱いが上手くなったわね」
「そうか? まぁ、最近結構一緒にいるからかな……」
「でも、山田を吉田くんに押し付けたみたいだけど、良かったの?」
「え、大丈夫でしょ? だって、吉田は山田の保護者みたいなもんだし」
「保護者って……」
(本人が聞いたら、ストレスでハゲそうなセリフね)
「それより委員長、その討論会って明日なんだろ? 邪魔はいなくなったしさっさと『悪巧み』でも始めようぜ?」
「『悪巧み』って……安藤くん、貴方もう少し言い方があるでしょう……『策略』とかね?」
「くっくっく……委員長、お主も悪よのう~」
「いえいえ、安藤くん、ほどではないわよ……?」
「「ヒィーヒッヒッヒ……」」 ←楽しそうな笑い声
「そうだな。やはり明日の討論会は――ぬぬっ!」 ぞわぞわ
「え、石田くん!? 打ち合わせ中に立ち上がって、どうしたの?」
「い、いや……すまない。何でもない。ただ、少し背中に寒気が……」
「大丈夫? 明日は大事な討論会だし、風邪には気をつけた方がいいよ?」
「ああ、心配をかけてすまない。藤林」
(何だ……今の『悪寒』は?)
【次回予告】
「皆、いつも応援してくれてありがとう! 委員長よ。
さーて、次回の『何故かの』は?」
ついに始まった討論会! しかし、そこには安藤くんの思いもしない人物が立っていたのだった……
次回、何故かの 「完全体」 よろしくお願いします!
「皆、応援してくれて嬉しいわ♪」
* 次回予告の内容は嘘予告になる可能性もあります。
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