第77話「自信」




『私に任せなさい! 安藤くんがハッピーエンドで悩んでいるなら、私もいいアイデアを考えてくるわ!』


(あんな風に言い切って数日……ど、どうしよう! 何もいいアイデア浮かんでないわ!

 本番は明日だって言うのにどうしたら~~……はっ! そうだわ!)




「いらっしゃいませー」



「ふーん、それでサクラはここ最近悩んでいたんだねー」

「そうなのよ……モモ、何かいいアイデアはないかしら?」

「でも、いまさらアイデア出しても遅くない? だって、本番は明日でしょ?」

「そうなんだけど、安藤くんも『朝倉さん、もう時間も無いし劇はこのままでやってみるよ』って言ってたけど……」

「なるほどねー」


(本当、安藤くんらしい考え方だねー)


「安藤くんもどうして、ロミオとジュリエットが生き続けるハッピーエンドが書けないのかしら? 確かロミオとジュリエットの『死』が『愛』を『永遠』にするとか言っていたけど……」

「サクラ、きっと安藤くんはロミオに自分を重ねて『不安』なんじゃないかな?」

「不安……?」

「うん、安藤くん言ってなかった?」

「そういえば……」


『俺は『不安』なんだよ。確かに、ロミオとジュリエットは結ばれた……だけど、その『愛』は『永遠』では無くて『刹那』的なものでしかないんじゃないか? ってね。だから、俺は最後に二人を死なせて天国で一緒になることでロミオとジュリエットの『愛』を『永遠』にしたんだ』


「――みたいな事を」

「やっぱり……安藤くんは自分が信じられないんだね。安藤くんのロミオってなんだか安藤くん自身に似ていると思わない?」


(似ている? 安藤くんとロミオが……はっ! そういえば確かにそっくりだわ!)


「そ、そうね! まるで自分をモデルにしたかのように安藤くんとロミオって似ているわ!」

「あはは……サクラってば今頃気付いたの? でも、その通りだよ。安藤くんは自分をモデルにこのロミオを書いたんだと思うなー」


(そして、ジュリエットは……)


「だからこそ、安藤くんは『不安』なんだよ。安藤くんって、何故か自己評価が凄い低いからロミオに感情移入しすぎて『こんな自分をジュリエットは本当に愛し続けてくれるだろうか?』って、心のどこかで思っちゃうんじゃないかなー?」

「なるほどね……だから、物語を『死』で終らせようと?」

「うん、ロミオはジュリエットを愛しているけど、自分に『自信』が無いから自分と一緒になったジュリエットが幸せになる未来を書けない……って、そんなところじゃないの?」


(その証拠に安藤くん、ジュリエットがロミオから離れる事は考えても、ロミオがジュリエットに愛想を尽かす展開は考えてないみたいだしねー)


「つまり、安藤くんはジュリエットを幸せにできる自信がないんだよ」


(うーん、そう考えると安藤くん凄いヘタレだなー……まぁ、相手がサクラだし、仕方ないと言えば仕方ないのかなー? サクラもサクラで結構鈍いからねー)


「でも、じゃあどうしたら……」

「それはやっぱり、自信をつけるしかないんじゃないのー? それか、いっその事――追い詰めちゃう♪ とか?」

「…………」


(自信をつけさせる……追い詰める…………ん? っは! そうだわ!)


「閃いたわ! モモ、お願い協力して!」

「え……?」





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