第36話「浮気」
「委員長! む、胸を触れってどう言うことだよ!」
「ああ、少し言い方が悪かったわね。もちろん、触る『ふり』よ? 実際に触ったらぶっ殺すからね?」
「お、おぉう……だよな」
(アブねーっ!『ふり』かよ。思わず速攻で触ってしまう所だったぜ……だって、委員長の胸朝倉さんよりも『ある』だもん)
「でも、何でそんなマネを?」
「安藤くんの気持ちを確かめる為よ。こう見えても私って結構胸はあるでしょう? うーん、まぁ『C』くらいはあるわ。でも、朝倉さんって胸は――『B』いけばいい方よね?」
「うん」
(触った時に思ったけどそんな感じだった)
「だから、マネだけでも安藤くんが私の胸を触る事で、朝倉さんの胸を触った時の気持ちとの『違い』を認識するのよ。もし、私の胸を触ろうとして昨日と同じようにドキドキしたらそれはただ安藤くんがスケベなだけ。でも、朝倉さんよりも大きい私の胸を触ろうとして昨日よりもドキドキしなかったら、それは安藤くんが朝倉さんが『好き』だから朝倉さんの胸を触る方がドキドキしたって事にならないかしら?」
「なるほど!」
(委員長は天才か!)
「分かったら早速始めましょうか」
「う、うん……じゃあ、行くよ」
「どうぞ、本当に触ったらぶっ殺すからね?」
「大丈夫!」
(まぁ、安藤くんなら少しくらいは許してもいいけど、後で朝倉さんにバレた時の事を考えると怖いから触るふりが無難よね)
(委員長の胸に手を――近づける!) ドキドキ……
「…………」
「…………」
ドキドキ――
「…………安藤くん、何を――しているの?」
「「――っ!?」」
(な、何でこんなタイミングで!?)
(朝倉さんがいるんだよぉおおおおお!)
【おまけss】「サイン本」
「あああ、朝倉さん……ちょ、ちょっと……これ見てよ……」
「安藤くん、どうしたの? 今日はいつにもまして挙動不審ね。あら、これは『やはり、私の純愛ラブコメはホモっている』の1巻じゃない。確かこの前ファン念願の121巻が2年ぶりに発売されたばっかりなのに、どうして1巻を持っているの?」
「うん、実は……朝倉さんが言ったとおり最新刊が出たし、復習するつもりで1巻を読もうとしたんだけど、これ巻数が長いじゃん? だから、最初の巻とかもう売っちゃってたから、中古ショップの『かいらんばん』で1巻を100円で買ったんだよ」
「ああ、そう言う事ね。確かに刊行が長いタイトルだと本棚のスペースをとるからまとめて売っちゃう事あるわよね……」
「それで、昨日さっそく家で読もうとしたんだけど……これ見て」 ポロン ← カバーをめくる音
「ん? カバーなんてめくってどう――って、うえぇええええええええええええ!? カバーをめくった所に『航海』ってサインペンで書いてあるじゃない!? あああ、安藤くん! ももも、もしかしてこれって作者『航海先生』の直筆サイン本なの!?」
「やっぱり、そうだよね……ネットで作者のサインを調べたら普通に字体や書き方のバランスが似てるし俺もそうだと思うんだよ……しかも、ほら」 ポロン ← 奥付のページをめくる音
「しょしぃおしょ『初版』!? 安藤くん、初版の作者直筆サイン本って嘘でしょ! 本当にこれが『100円』で売ってたの……ちょっと、これオークションとかで売ったら凄い値段になるんじゃないの……?」
「そう思って昨日、落札相場をスマホで調べてみたんだけど……ほら」 ポロン ← スマホを出す音
『やはり、私の純愛ラブコメはホモっている』 1巻、初版 作者直筆サイン付き
落札金額
『100000円』 入札件数18件
「「一、十、百、千、万…………十万円ッ!」」
「ちょっと、安藤くん! どうするのよこれ!? こんなの『おまけ』でするような話じゃないでしょ!」
「朝倉さん、どどど、どうしよう!? 俺大金持ちになっちゃうかも!」
「落ち着きなさい……安藤くん、とりあえず落ち着くのよ……よし、まずは実際にこのサイン付きのラノベが売れるのか、帰りに中古買取してる『かいらんばん』で査定だけしてもらいましょう……」
「そそそ、そうだね。朝倉さん!」
そして、放課後……
「サインが本物か保障が出来ないので10円ですね♪」
査定金額
『10円』 スカーン
「…………」
「…………」
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