第7話「デート」




「朝倉さん、先ずはライトノベルのコーナーを見ようと思うんだけどいいかな?」

「う、うん……私はかまわないわよ」

「じゃあ、ラノベのコーナーはあっちだから行こう!」

「は、はい……」


(何で私は放課後に安藤くんと二人っきりで大型の書店に来ているのかしら? もしかしてまた夢! いいえ、これは実感が湧かないけど現実だわ……っは! もしかして、

これって俗に言う『デート』ってやつじゃないの!? キャーッ! 私ったらまだお付合いもしてない男の子と二人でデートだなんてどうしたらいいのかしら! ヤダヤダ、深く考えちゃったら顔が赤くなってまともに安藤くんを見れないわ)


(朝倉さん、元気ないな。やっぱりデッサンのグレムリンリボン事件のことまだ怒っているのか? まぁ、仕方ないよな……だってあの後、怒った朝倉さんに彼女が描いた何故か無駄にイケメンな俺の似顔絵で『安藤くんのバカーっ!』って言いながら頭ブン殴られたもんな……いや、もしかしたらぼっちの俺なんかと一緒に本屋さんに来ているのが嫌なのかもしれないな。しかし、これだって別に『デート』ってわけじゃなくて、俺がグレムリン事件のお詫びに――



 回想

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「朝倉さんごめんなさい!」

「もういいわよ……似顔絵で殴ったのは私が悪いわけだし……そりゃ、グレムリンみたいな顔だったわよね」


(確かにあの時の朝倉さんはマジもんのグレムリンみたいだったけど……しかし、このまま朝倉さんの機嫌が直らないと、俺が学校中の男子に殺されかねない)


「そうだ! 確か朝倉さんってラノベよく読んでいるよね?」

「……え、気付いてたの?」

「あ、うん。ゴメン……実は何度か休み時間にスマホで『なろう』の小説を読んでるのを見かけてね。ゴメン」

「う、ううん! 全然いいのよ! そ、それで?」

「えっと……朝倉さんがよければなんだけど、今回のお詫びとして何か俺に朝倉さんの好きなラノベをプレゼントさせてもらえないかな?」

「ふぇ………………」

「だ、ダメかな?」

「っ! ひょ、ひょろこんで!」


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(って、感じで朝倉さんを帰りに行きつけの本屋に誘ったわけだけど、やっぱりマズったか?)


「…………」

「…………」


(そ、そうだわ。思い出したわ! 確か、安藤くんが『好きなラノベを言え……どんなタイトルでも一つだけ買い与えよう』とか、シェンロンみたいな事を言うから、彼が話しかけてくれた嬉しさとか、私がラノベ好きなのを知っていた恥ずかしさから舞い上がって変な返事っしちゃったのよね……っていうか、安藤くんが私のラノベ好きを知っていたと分かった時は思わず心の中で『なろう読んでたの気付いてたんかーーーーいっ!』って、思いっきり叫んじゃったわよ。何? つまり、彼は今まで私がラノベ好きなのを知っていた上でこの学校一の美少女で同じ趣味を持つ女の子をトコトン無視していたの? なんなのよそれ! もう、鬼畜過ぎるでしょ!)


(しかしな。今回は事情が事情だけに朝倉さんと一緒にいるけど、本来朝倉さんっていくら百面相する癖のある残念美人だとして一応は学校一の美少女なわけで……校内ヒエラルギーの底辺にいるぼっちの俺なんかが気安く話せるような女の子じゃないんだよな……よし、さっさとラノベプレゼントして明日からはキッチリと彼女の存在には触れないようにしよう! じゃないとぼっちで童貞の俺は変な勘違いしちゃうからな!)


「朝倉さん、どのラノベが欲しいの?」

「そ、そうね! どれにしようかしら~」


(よし! この買い物を乗り切れば明日からまたただのクラスメイトだ!)


(こ、これを機会に明日から、もっと安藤くんと話せるといいな……うふふ)



                  つづく


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