第112話 赤いシーツ

 201号室の扉の前を通ると、彼女の声がした。

 帰るのだろう、ドアが半開きになっていた。


 この部屋にいたのか…。

 すれ違うことも無く、他の部屋の清掃を何部屋か終わらせて、

 201号室に入った。

 デリ客というのは、部屋を荒らす。

 この部屋もそうだ。


「シーツに血が付いてるよ、キタネェ…生理で商売すんな、バカデリ!!」

 部屋でバイトの罵声が飛び交う。

 清掃員にとって、客なんて意識は無い。

 バカ客、クソデリ、目くそ鼻くその底辺の罵り合いだ。


 そんな血が付いたシーツやタオルでも、彼女が罵られているようで心が痛む。

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