狐のしっぽ

風の吹く秋の小道を

狐がひとり歩きます

耳をピンッと立てて

ふさふさしっぽに歩きます


角の向こうは人の街

遊びに行くには人の子に

うまく化けなきゃいけません


ふさふさしっぽをひとつ振り

狐はしばし考えます


吹いてくる風は穏やかで

今日のお日様はぽかぽかです

しっぽをふっくらさせるには

最高の日かもしれません


お山のお社守をする長老様も言っています

「しっぽは何より大事にしなさい

白狐さまは立派なしっぽをお持ちです

しっぽはとっても大切なのです」


吹いてくる風は穏やかで

今日のお日様はぽかぽかです

しっぽをふっくらさせるため

狐はお山に向かいます


お社からは珍しく

人の女の子がひとり降りてきました


慌てて茂みに飛び込んで

狐は息をひそめます

人に見つかってしまったら

いけないことになっています


首を傾げた女の子は

不思議そうな顔をして

結局そのまま帰っていきました


吹いてくる風は穏やかで

今日のお日様はぽかぽかです


しっぽをふっくらさせるため

狐はお山のお社で

くるんと丸くなりました


ふさふさの真っ白なしっぽを

風がふわりと撫でていきました

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