第2話 漁夫の利、夜の陽
月は自らの陰影を際立たせるかのよう光っている。と言うととんでもないバカを見つけたかのように批判されるだろうから先に言っておくこととしよう。月が光っているのは太陽の光を反射しているからであって、月自身が光っているわけではない。そんなことは中学を卒業した私と、そして君たちであれば当然知っていることだ。しかしながらあえて月は光っていると言おう。地上から見た月が光っている(かのように見える)ように、外野から見れば実体としてどのような仕組みかはともかくとして月の輝きは紛い物ではないのだ。この現象に名前がついているのか定かではないが、ここでは月光現象と呼ぶこととする。この月光現象は実は人間組織にも投影することができる。
人間社会では全員が全員ヒーローに成ることはできない。近年の幼稚園や小学校では、劇をすればやれ全員主人公。リレーをすればやれ全員手をつないで一位。こんなことが往々にまかり通っているとはいえども、まだまだ大人の社会に件の社会主義は持ち込まれてない。では全員がヒーローに成ることのできない大人資本主義社会の中で、凡才はどのように輝けばいいのか。そう、ご名答の通り月光現象を利用するのである。
月光現象を大人社会に導入するとどうなるか。ヒーローになることのできない平々凡々でもヒーローの光を浴びることによって、地上から見た凡庸は英雄へと昇華する。中谷彰宏氏の「笑われた人が、ヒーローになれる」では同調圧力と言う名のマジョリティに埋もれないオリジナリティを提示していくことを唱えているが、わざわざ笑われる必要すらない。人から後ろ指をさされてそれでも我を貫く人と一緒にいるだけで良いのだ。え?それで俺も冷笑を買ったらどうするんだって?知らないよ、そんなことはね。
周囲の人間の評価に屈せず我が道を往く人間は現代社会では貴重と言える。インターネットが各人を縛り、そして蝕む今では上司や識者だけではなく世論という同調圧力がそれぞれを支配するからだ。まさに名は体を表す、インターネットは蜘蛛の巣のように私たちを搦め捕り監視している。そんな中で信念を貫き通すことのできる人間は出世するんじゃなかろうか。イン・アザー・ワーズ、能力のない人間にはこんな生き方が出来ないと言い換えても良い。能力の低い人間ほど自己評価が高い(ダニング・クルーガー効果)というイギリスの実験結果もあるが、なるほど、自分を正しくモニタリングする能力に欠けているということ。そんな特性を持ち合わせない人間が出世していくほど社会は甘くない。信念を貫き通し自分の信ずる道を歩むというのは口で言うほど簡単なことではなく、それを実現している大器が周囲に居るとするならばぜひ時間を共有するべきだ。そして信用を勝ち取りポジションを固めるのだ。彼は太陽になる。太陽が輝きを放つ時期に日向にいられるかどうか。それがヒーロー戦隊へのボーダーラインなのだ。
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