⦿


「だいじょうぶ? それのどあめよ。おばあちゃんの。だいじにして、がんばってね」


 リオンは遠慮しようとして、ぷるぷる震える小さな塊を返そうとした。


「いや……その、おじょうちゃん、しらないひとにものをもらっちゃいけないだろう? お母さんかだれかに教わらなかったかい?」


 幼女は首を傾げた。わかっていない。


「だってしらないひとにものをあげちゃだめって、ママ、いってなかったのよ?」


「あ……そう」


 それだけ言うと幼女は、立ち去りがたい様子で、後ろむきに歩いていった。最後まで手をふっていた。


 それより、


「らいじにしてぃぇ、ばんがってね」


 としか聞こえない幼女の言葉を、よくも翻訳しおおせたと思う。


 放心したまま、指の間にぶらさげた緑色のぷにゃぷにゃを目の前にかざす。鼻をつく刺激臭がした。勢いよく鼻にしわを寄せてつき放す。どうやらこれは危険物とみえた。


 彼はつまんだそれを投げ捨てた。ぷにぷにと転がって、緑色の飴玉は埃にまみれる。


 心底、彼は休みたかった。身体がじっと立っているのを拒むのだ。


 だが日が暮れるのにはまだだいぶ早い。


 ろくに物を食わずば、力も萎える。リオンはそれでも立ち続けていた。


 いつまでも、いつまでも……

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