ブンヤ一筋!文屋千尋!異世界でも頑張ります!!

鯉々

【特報!!】異世界は実在した!!!

 どうも皆さんこんにちは!新聞部の文屋千尋ふみやちひろです!

 なんと私!今回、科学部が開いた実験に特別に参加させてもらっちゃいました!!

 どんな実験かと言うとですねぇ……なな!なんと!?どんな所にも瞬間移動出来ちゃう装置なんだそうです!!びっくりですね!

 では早速、部室に入ってみようと思います!

「こんにちはーー!!新聞部のものでーーーす!!!」

 元気に挨拶!ブンヤの基本です!

「あ、ああ来たんだね?じゃあ入って」

 科学部の部長さんがお出迎え!眼鏡の奥の瞳が知的です!!

「すみません!まずはお名前をどうぞ!」

「えっ……前に言わなかったっけ?」

「新聞に載せるんですから!間違いが無いように念のためです!」

「あ……えと、化生明子けしょうあきこです」

 化生さん!ちょっと顔色悪いですが緊張してるのかな!?

 

 化生さんに案内されて、機械の前にやってきました!デカイ!学校に許可は取ってるんでしょうか!?そこんとこも気になる所です!

「えっと、この機械は物を瞬間移動させることが出来て……」

「なるほど!」

「中に物を入れて、ここのボタンで座標を打ち込んで……」

「ふむふむ!」

「で、ボタンを押すとその地点に移動する。……こんな感じかな?」

「なるほど!完璧に理解しました!」

 これは世紀の発明品になるかもしれません!!その情報を最初に抑えたのが文屋となれば……ククク、笑いが止まりませんね!

「ではまずはやってみましょう!」

「う、うん。じゃあこれ持っててね」

「これは?」

「無線機。一応、ね……?」

 ムムムッ!?これはこれは!文屋の鼻フミヤノーズが事件の匂いを嗅ぎ取ってますよ!?嫌な予感、ビンビンです!

「じゃあ、学校の校庭に座標を合わせて……スイッチオン!」

 おおっ!!動き出しました!ぐわんぐわんなっております!ぐわんぐわんなっております!めちゃくちゃ揺れます!!でも、この取材をやり遂げるという文屋の考えは揺れないのです!!

 あっ!眩しっ!光りすぎです!!何の光でしょうか!?文屋を称える光でしょうか!?




 皆さん、文屋は今村の様な所に立っております。

 ここはどう見ても校庭ではありません。一体どこなのでしょうか!?ちょっと探索してみます。

 あっ!第一村人発見!!早速声をかけてみましょう!

「すみませーん!ちょっとお話宜しいですか!?」

「自分、文屋と言う者なのですが、ここは何と言う場所なんでしょうか?」

「え?何と言うって……シミュナ村だけど?」

 早速情報ゲット!シミュナ村と言うそうです!

「人口はどのくらいですか?」

「え?んー……そうだなぁ、60人ぐらいか?」

 少ない!昨今問題になっている過疎地というやつです!村の危機です!

「あの、お嬢ちゃん。どっから来たんだ?この辺の人間じゃないだろ?」

「はい!文屋は志乃山町という所から来ました!」

「シノヤマ?聞いた事ねぇなぁ……」

「最後に!お名前を教えてください!」

「あ、俺か?俺はマイニング・メイってんだ。この辺で鉱夫やってる」

 なななんと!マイニングさんは鉱夫さんでした!通りで逞しい体な訳です!ムキムキです!男らしいです!

「ありがとうございました!それではこれで、失礼します!」

「あっ、ちょっと……!」

 文屋は急いで駆け出します!後ろで何か聞こえた様な気もしますが気にしません!文屋は後ろを振り返らないのです!!


 皆さんここで文屋は、驚愕の事実を伝えねばなりません。

 何と!!ここは!!!異世界でしたっ!!!!

 何と言う事でしょう!?今流行のやつです!文屋の学校でもそういうの読んでる人がいるそうです!!これはしたり!これはしたり!大チャンスです!特ダネ待ったなしです!!

 証拠を見せろ?考えてもみてください!実験の失敗!フラグとしか言い様のない無線機!聞いた事の無い村!さっき見かけた未知の蝶!これは!まさに!異世界ですよ!

 そうと分かればじっとしている訳にはいきません!皆さんの期待に応えるべく!文屋は駆け出します!!今の文屋はボルトよりも速いかもしれません!!

 

 そうして走っていると川に辿り着きました!何という綺麗な川でしょうか!澄んでおります!お魚さんが水底から「こんにちは」しております!清流っ!

 ふと見ると釣りをしている女性がいました!チャンスッ!インタビュー、開始ィ!

「すみませーん!ちょっと宜しいですか?」

「え?あたし?」

「そうですそうです!お話を伺いたくてですねぇ!」

「どうぞ?」

「ではっ!ズバリ!ここの川は何という名前ですか!?」

「名前?あ~何だっけ……?確かぁ……ミルド川だったかな?」

「ミルド川!なるほど!では次に、どのような魚が棲んでいますか?」

「おっ!あたしの得意分野だな!まずは鮎だろ?それから……」

 皆さん!カットしてしまい申し訳ありません!ですが長いのです!!万里の頂上かって位に長いのです!!後でまとめて掲載しておきますのでどうかご容赦を!

 それよりも!意外な事実!異世界の川の生態系は、我々の住む世界と非常に似ているようです!食べ物によるカルチャーギャップの心配はありません!多分!

「……ありがとうございます!非常に貴重な情報でした!」

「そう?まっ、あたしに聞きたい事あったら何でも言いな?」

「では!お名前を!」

「あたしはマチルダ・メイ。この辺でたまに釣りするんだ」

 おーっと!何という偶然!何という奇跡!先程のマイニングさんのご親戚でしょうか!?

「もしや、マイニングさんをご存知ですか?」

「ん?父さんの事知ってるの?」

 まさかの親子!!親子競演です!!

「はい!実は先程お父様にもインタビューしまして」

「へぇ~。何?君新聞記者?」

「はいっ!ブンヤ一筋、文屋千尋ですっ!」

「おー!じゃあ、あたし新聞に載っちゃったりする?」

「勿論です!こんなに貴重な情報を下さったんです!でっかく載せますよ!」

「ホント!?いや~実は一度載ってみたかったんだよね~」

「完成次第届けますので!ではこれでっ!」

「おう!またおいでよ~!」

 文屋はマチルダさんに別れを告げ、再び駆け出しました!今の文屋のステップはプロのダンサー顔負けです!風船みたいに軽やかです!



 緊急事態!空腹です!このタイミングでお腹が空いてしまいました!

 でも、大丈夫!今文屋は街に出て、大通りにいます!

 先程のシミュナ村とは違い、めちゃくちゃ賑やかです!あっ!静かな場所も文屋は好きですよ?別にシミュナ村を馬鹿にしたわけじゃございません!

 

 文屋の目の前にはレストランがあります!入ってみましょう!異文化の食事!心が躍ります!

「いらっしゃいませー」

 可愛らしい店員さんがお出迎え!同い年位でしょうか?男子の皆さん!要チェックですよ!!

「こちらのお席へどうぞ」

 木で出来た椅子と机!いい雰囲気です!

 まずはメニューを見てみましょう!

 オムレツ、ハンバーグ、スパゲッティ……エトセトラエトセトラ。

 何たる偶然!こっちの世界とほぼ一緒!しかし、何個か見た事無いのもありますねぇ。折角ですから、ここでしか食べられないものがいいですね。

「ご注文はお決まりですか?」

 ああっ!もう来てしまいました!止めて!そんな可愛い声で聞かれたら、文屋の脳が蕩けちゃう!……まあ冗談はさておき、これにしてみましょうか。

「えっと、この『パイルのステーキ』?下さい」

「はい、かしこまりました」

 自分でも何が来るか分かりません!どきどき!テストの答案が返ってくる時みたいに脈が上がります!


「お待たせしました~」

 おっ、来ましたね!これは……牛肉でしょうか?こちらの世界ではパイルと呼ぶのかもしれません。

 では一口。…………皆さん、伝わりにくい表現で申し訳ありません。これ、蛙みたいです!昔、海外で食べた蛙の味に似てます!正確には鶏肉みたいな味です!

 美味しいかって?勿論ですとも!文句なしです!チョベリグです!



 ブンヤ一筋、文屋千尋。大ピンチです。お金。日本円しか持ってないです。

 これはまずいです!異世界でブンヤが無銭飲食で逮捕なんて!一面飾っちゃうかもしれません!

 とりあえず、謝りましょう。もしかしたら、ということもあります。別に落ち込んでなんかいませんよ?決して。

「お会計、43リンになります」

 冷や汗が出ます。リンって何ですか。元素ですか。

「あの、すみません。これで、勘弁してやってください……」

 とりあえず、有り金を全部出します。2,432円。文屋にとってはそこそこの金額です。

「あの……お客さん?これは……」

 うう!その様な目で見ないで下さい!文屋もこんな事はしたくないんです!

「えっと……はい、これでどうぞ」

 えっ?1,800円返された?どういうことでしょう?

「お客さん随分遠いところから来られたんですね」

「え、あっはい!そうなんですよ!文屋遠くから来ちゃいました!」

 ううっ……文屋は何て嘘を……。

「この辺り、沢山お店ありますから見ていってくださいね!」

「あ、ありがとうございます!」

 助かったーーー!助かりました!!文屋は!生きてます!

 どうやら、日本と同じ貨幣を使っている国が在るようですね!思わぬ収穫です!



 皆さん申し訳ありません。もう文屋は疲れました。とりあえず、このレストランの裏路地で寝ようと思います。まだまだ明るいですが、流石に初日は慣れてない事もあり、ぐったりです。

 それでは皆様、おやすみなさい。

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