第5話「仲間」

 SEが二人を乗せ、車を運転している頃。


 ぎぃぎぃぎぃ~。


 とある一室で椅子を揺らしながら暇そうにペロペロキャンディを舐めている青年が呟いた。


 ドドドドドドドド!


 青年は名を犬塚鳴いぬづか めいといい、ジーパンだけという格好で、たくましい肉体を惜しげもなく見せていた。


「暇だ~。あいつは仕事中だしお前は」


 そこで青年はチラッと横を見た。

 そこには大体高校生くらいの女の子がスッポリと履ける怪獣のパジャマ姿でネコの抱き枕を抱え無表情でいた。


 その女の子は青年の視線に気づくとニッコリと微笑んだ。


「はぁ、ひびき。我が妹ながら可愛いのはわかったが、お前じゃあ話相手にならないからなぁ。SEの奴、早く帰ってこないかなぁ」


 そう言われた響は、


 パクパク!


響は言葉を発さず、口だけを動かすと、鳴は何を言いたいのかを感じ取ったのか、


「そんなことない! ひびき、お話できる! って言われてもな」


 と、響が言わんとしていたことを呟いた。

 その投げやりな態度に響は鳴を睨んだ。


「あぁ、はいはい、じゃあ、何話す?」


 もう結果がわかっているのか鳴は面倒臭そうに言った。


 パクパク!


「じゃあ、戦隊モノの今後について!」


 鳴が代わりに言った言葉に妙に力が入っていたことから響が戦隊モノを好きなことが手に取る様にわかった。


「いや、だからオレ知らねぇから!」


 響は頬を膨らませながら、口だけを動かし、


「おにいちゃん! 男の子なら戦隊モノは必修だと思う!」


 とまたしても力強く口を動かした。


 ッバリバリバリ!


 その言葉を聞いた鳴は舐めていたキャンディをかみ砕き、


「いやいや、男ならやっぱ実践でしょ! SEの野郎いいなぁ! 仕事だぜ! 仕事! 暴れ放題じゃねぇか!」


 正拳突きを繰り出しながら鳴がわめくと、


「そんなんだから、セっちゃんに置いてかれるんだよ」


 普段、響はSEのことをセっちゃんと言っているのだった。なんでも『SE』と言うのは意外と大変とのことで、ローマ字読みのまま、『SE』を『セ』にしている。しかし鳴はちゃん付けする方が大変じゃないんだろうかと日々思っている。


「うるせぇ!」


 鳴が図星を突かれ、怒声を上げると、


「あたし、喋ってないし! うるさいのはおにいちゃんだけだよ」


 と口が動いた。


「いや、まぁ、お前が喋れないのは知ってるけど。あぁ、もういいや! 早く戻って来いよSE!」


 バタン!


 その瞬間勢いよく扉が開かれた。


「お! SE!」


 扉を開けた人物を見て、鳴は嬉しそうな声を上げた。

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