狂気な日常

御憑 狐華

第1話:いつもの日常

 “世界は完全に壊れてしまった”

 

 いつから壊れたのか定かではないが気が付いた時にはもうすっかりと狂っていた。


 駅前では、若い警官とヤンキー風の若者がワイワイと騒ぎながら何やら怪しい白い粉を吸ってアヘアへしているし、幼女を変態的に追い回す変態男子高校生もいる。


老婆は電動自転車で首都高速を走行するし、電車の1両目にはなぜかオネエが詰め込まれ、オネエ専用車なるものが存在する。


目の前のベンチに座る高校生カップルはもう深夜2時を回るというのにもう一向に家に帰る気配はない。


終いには、その場でセックスをし始める始末だ。


そんな風景を尻目に私は、自転車に跨る。


正確には跨ろうとした、その時私の愛車の異変に気付く。


本来サドルのある所にパセリの束が入れられていた。


籠の中には108円の千切りキャベツのパックが入っていた。


それは私の自転車だけではなかった。


駐輪場一面サドルがパセリの束に変えられているのだ。


そこはまさにパセリ畑であった。


ブロッコリーやカリフラワーならわかるがなぜパセリなのか。


パセリ農家の回し者なのか、パセリ農家からパクってきたパセリなのかイマイチ良く分からないが、パセリ農家も丹精込め作ったパセリがこんな目に合っていてはいたたまれないというものだ。


私はサドル部分に詰め込まれたパセリの束を近くのセックスしているカップルの男のアナルに生け、千切りキャベツをアヘアへする警官の口に無理やり押し込み愛車を押して帰途についた。



 駅のロータリーを真っ直ぐ進み、ラブホ街を突っ切って、しばらく直進した路地裏にマイホームがある。


ラブホ街を突っ切る際ラブホから出てくる、老人と幼女すれ違ったが気にしない事にした。


家の傍にある、HOTEL Erosとかいう何とも直接的でネーミングセンスの欠片もないホテルの角を曲がろうとしたとき、ホテルから風変わりな小太りで中年の男がたった一人で出てきた。


男は民族衣装的なものに身を包み首からネックレスやら、角笛やら謎な物を無駄にジャラジャラと下げていた。


男は私に詰め寄り、


「君、公務員になりなさい」


といった。


男は続ける。


「この世の中は女の奪い合いだ!誰のパンツを脱がせるかで人生が変わるんだ!いいかだから君は公務員になりなさい。」


イマイチ良く分からない。


なぜ公務員の話からパンツの話になったのか?


「突然こんな事を言ってしまってすまない。何か質問はあるかね」


私は男の質問を完全に無視して、男の股間を蹴り上げそそくさと家に帰ったのだった。

 

 家に帰るとポストに


“男性限定時給30万円。高級マダムの接待。(イケメンに限る)自信のある方はこちらへ 0120-69-***迄”


という明らかな詐欺広告が入っていた。


友人の話によれば、ヤクザの奥さん的な人を抱かされ、それを弱みに借金をさせられるらしい。


広告で折鶴を折ってお隣のポストに投げ入れ、スーパーの売れ残りの、口では言えない謎の肉を使用したコロッケを今日もチンする。

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