第10杯 神様の都合で強化されました。
メンマを襲った魔物の名はディアベア。
強靭な肉体による突進は大木をなぎ倒し、異常発達した前足の薙ぎ払いは同体格の魔物を瞬殺するこの森の王である。
ライクの魔物証本によるとA-ランクに指定されている。
「すいませんすいませんすいませんすいません!そんなつもり無かったんですってばーーーー!」
※魔物は言葉を話せません(一部除く)。
※知能もありません(一部除く)。
青い毛色をしたディアベアは大木をなぎ倒しながらメンマを喰らおうとしている。
メンマは木の影や地表出た根に隠れながらちょこまか逃げている。
「くそーー!何でこんなことに!!」
メンマはパクのいる一枚岩に近づけまいとする。
(はぁはぁ……このままじゃジリ貧だな)
「サイコキネシス!サイコキネシス!くそ!なんだよ発動しろよ!」
(発動したところで勝てるとも思わないがな)
木の根に隠れながら落ちている尖ってる木を動かそうとするがうんともすんとも言わない。
ディアベアは一時的にメンマを見失ったのか咆哮を上げている。
(ふう……とりあえずここでやり過ごすか……)
「ぐぅおおおおおおおおんーーーー!!」
「ぐぅおおおおっおおおおーーーー!!」
「「ぐあーーぅぐぉーーん!!!」」
(ん?咆哮が……2つ?……っ!!)
もう一つの方向が聞こえる先は……。
「パク!!」
メンマは木の根の影から飛び出すと近くにいるディアベアの視線に入らないようにかつ素早く一枚岩の方角に向かう。
ディアベアも向かっている様だがメンマの事などとうに忘れたと言わんばかりに余裕な足取りである。
「これならこいつより早く着く!!」
最悪の事態が頭をよぎる。
(頼む……無事であってくれ……)
死ぬ気で走った……高校の部活のトレーニング以来走っていなかった為体力は限界に近い。
「はぁはぁはぁはぁ……ごほっごほ……」
口の中が血の味がする。
(くそっ……訛ってやがる……はぁパク……無事か……ん?)
メンマは血の臭いが口の中だけかと思ったが違う……嗅覚でもその匂いがするのだ。
(嘘だ……嘘だ……嘘だ嘘だ嘘だ)
(信じたくない……信じたくない……)
メンマは歯を噛み締めながら一枚岩の方を見た。
一枚岩は無残にも叩き割られ、上にあった屋台は粉々になり、余ったスープが岩の隙間に滴り落ちていた。
その中央で悠々と座り込むもう1頭の赤毛のディアベア……そいつは何かを食っていた。
ぐちゃぐちゃと音を鳴らしながら食べるそれは何か遠目ではわからないが赤毛のディアベアの近くには妹がパクにあげたはずのパーカーの切れ端が散乱していた。
「クソ野郎がーーーーーーー!!!」
メンマは悠々と食事を楽しんでいる赤毛のディアベアに向かって走った。
散乱した屋台の残骸から豚骨解体用の牛刀を掴むとディアベアの脇腹に深々と刺した。
「ぎぃぎゃーーーーー!」
赤毛のディアベアは体制を崩し、落盤した岩を滑り落ちて行った。
メンマの殺意は止まらない。
転げ落ちる赤毛のディアベアを追いかける。
転げ落ちて頭を打ったことにより、一時的なスタン状態になったディアベアの右目に飛びかかるように牛刀を刺し込んだ。
「ぎぃぃぃやーーー!!!」
長い牛刀の歯は赤毛のディアベアの脳まで達していた。
絶命まではいかなかったようだが右手、右足はダラっと動かなくなり、咆哮を力無くあげている。
「はぁ……はぁ……はぁこのクソ野郎が!パクの敵だ!」
止めを刺そうと首元を掻っ切るため牛刀を振り上げる。
「ぎぃーぎゃーーーー!」
「ぐぅわーーーぎぃーーーぎゃーーーー!」
メンマは後ろを振り返ろうとすると横から衝撃を受けた。
大木をもなぎ倒すディアベアの横薙ぎを受けたのだ。
「ぐぅふぁ……」
メンマは吹き飛ばされ割れた一枚岩の中心までまで吹き飛ばされた。
(くそ……何が起きた……)
自身の身体を確認する。
(おいおい何でここに俺の腕があるんだよ……ぐふぁ)
メンマの倒れる目の前にあったのは自身の千切れた右腕。
辺りには自身の血だまりができている……。
左足の感覚はかろうじてあるものの右足は全く感覚がない。
砕けた屋台の破片が背中に突き刺さり、全体を見ることが出来なくとも致命傷だということが分かる。
「くそ……くそ……でもまぁパクの敵はとれたし……良かったな」
(もうラーメン作れないのか……親父に美味いと言わせるラーメン作りたかった……異世界の事もせっかく来たんだから知りたかったな……パクごめんな……何もしてやれなくて……)
『ピンポンパンポーン!どうもーカンリでーす!あれれ?死にかけですか?まだ30分も経ってないですよ!早すぎませんか!』
(うるせぇ……こんな所に転移させやがって……)
『それはカンリのせいじゃないですよー。神様に文句言ってくださいよ!』
(じゃあ繋げてくれよ。そいつには色々と文句があるんだよ!)
『はいはい!ちょっと待ってくださいね!』
(繋げんのかよ……)
『はい!神様に繋げましたよ!』
(カンリさんありがとう)
『ほいほーい神様だよー。なんじゃいな?パクは元気かの?』
(元気かの?っじゃねぇーよ!!!パク死んじまったよ!お前がやった異世界渡航のせいでな!)
『なぬ!なんという事じゃ!それは真か!?』
(そしてめでたく俺も致命傷だよ!はははふざけんなよコノヤロウ!サイコキネシスってやつも全然違うじゃねぇか!!ぶっ殺すぞコノヤロウ!)
『神に向かってコノヤロウとはなんじゃ!それに神を殺したらお主は神殺しじゃ馬鹿め!』
(おうなってやろうじゃねぇか!ぶっ殺してやる!)
『お2人ともやめて下さいこんな時に……メンマ様パク様の死亡を確認したのですか?』
(いや……してないけど……)
『おいカンリやちょっと冥神とこにパク死んだか確認してきてくれんか?』
『えー神様行けばいいじゃないですかー』
『薄情な奴じゃのう給料減らすぞい?』
『ただいま聞いてまいました!』
(はや……)
『結論から申しますとパク様はまだ亡くなっておりませんでした。どこかで生存しているようです』
(まじか!よかったぁー……)
『ほれみろほれみろわしが見込んだパクちゃんがそんな直ぐにくたばる訳なかろうお主じゃないんだからの!』
(ぐぬぬぬ。)
『さてと冗談はさて置いてお主が死んでしまっては意味がなかろう……パクもこのままではあの魔物に食われるのも時間の問題じゃ……』
(はぁんでもどうすんだよ……俺もう動けないぞ?)
『うーーむ。ちょっと反則っぽいがしょうがないかの……カンリや』
『はいはい。かしこまりました』
(???)
『メンマ様の異世界渡航時の神託を変更いたします。メンマ様が体たらくではパク様を守れないとお考えの神様の考えですのでお気をなさらず』
(……)
『メンマ様の称号能力者をもう少し解放いたします。それに伴いサイコキネシスをLv5にアポートLv5、ヒーリングLv5を習得。更に称号還元家を与え、それによってプレミアムスキルポイントテイカーを習得いたしました。』
(うわーなんか増えた……でも俺使い方分からんしな……)
『ほっほっほ確かに使い方がわからんなら宝の持ち腐れじゃの……カンリやこやつがスキルを覚えた時は説明してあげなさい』
『かしこまりました。カンリ張り切って説明いたします!』
(んじゃーお願いします)
『はい!まずサイコキネシスLv1は1度手で触れた1gのものを1秒だけ動かすことの出来るスキルです。先ほどの石は10.2gあった為効果がありませんでした』
(おいおい……Lv1使えな!)
『まあ規則ですので……Lv5になった今では10kg以内のものを10万秒使うことができるようになりました』
(10万秒と言うと27時間か……これは時間気にしなくていいみたいだな)
『アポートLv5は10kg以内のものを誤差1割の物と場所を交換できるスキルです。つまり10kgのものなら9kgから11kgまでのものと交換できます』
(すごっ!それすごっ!)
『まだまだ!次はヒーリングです!これは自己回復能力の底上げです!これは倍率ではなく効力が上がります。Lv5ですと腕くらいなら繋げちゃいます!』
(おお治んじゃんそれ使えば!!)
『このLvまで上げてもらったのですから頑張ってくださいね!次死んでもおまけは無しです』
(はい……気をつけます……)
『さてさてこんなもんで驚いてはいけませんよ!称号還元家によって発現したポイントテイカーはもっと凄いですよ!』
『ほっほっほサービスしすぎたかの?』
『全くパク様の事になると甘いんですから神様は!初めパク様がメンマ様出会った時不届き者だったら天雷落とすって言ってたんですよ笑えますよね!』
(なにそれ怖い……えーとそれより説明の続きを……)
『あっ!はいはいポイントテイカーとはですね。本来ならスキルのレベルはショッケンのポイントかザンパンの排除ボーナスなのですが……なんとメンマ様は戦闘によっても若干のポイントが還元されるのです!』
(えっ?それってすごいの?)
『もちろんですよ!!ポイント量は少ないですが本来なら長い期間必要なポイントを戦闘するだけで蓄積できるんですから!』
(あっそうなの……俺戦いたくないんだけど……)
『ほほほ。せいぜいパクちゃんを守ってくれたまえ!』
(はいはいかしこまりー)
『それではヒーリングはこちらからかけときましたんであとは頑張ってください!多分その力あっても苦労するとは思いますが……』
(おいちょっと待て!それどうゆう……)
『まあ長い説明の時にパクちゃんのこと見てきたがの心配いらんじゃろ!まあ頑張るのじゃ!』
長い長い狭間の会話知るものはメンマだけである。
らーめん屋見習いの異世界飯 〜超能力チートで異世界旅〜 七浜ユウキ @yuukinanahama
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