双子の自伝書コレクター

桜木 彩

序章:都市伝説の本屋


 近頃、ちまたで密かに広がっている都市伝説がある。

 それは、『一生に一度しか入店する事ができない本屋がある』というものだった。

 いくつか証言も出ていて、共通していることは4点。

 •本屋の名前は《彩雲堂さいうんどう

 •店主はしなやかな黒髪の少女ひとりだけ

 •購入できる本は一冊だけ

 •後日同じ場所に行っても店はどこにもに無い

 ただ、異なっている事もあった。

 それは、店の場所。

『路地裏で迷っていた時にみつけた』という者もいれば、『湖に遊びに行った時にみつけた』という者もいた。

 では、そんな不思議な本屋ではどんな本が売っているのだろうか。

 ネットには、実際に《彩雲堂》に『行った事がある』という書き込みは多く見られたが、『どんな本を購入したか』を書き込む者はいなかった。

 謎に包まれた《彩雲堂》の秘密を暴こうと、マスコミも血眼になって探したが、なかなか見つからなかったらしい。


スクープ写真を撮るために駆け回る人間を、ビルの屋上から見下ろす2つの影には、誰も気づかない…

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