無双
分隊が俺を取り囲む。
今までだったら、いの一番で逃げ出してたと思うけど、少しは皇女一行に情がうつったかも知れないな。
敵は50人ってところか、レベルアップしたとは言え、多勢に無勢だろ。俺のこっちの世界でのレベルは「9×4」だからレベル4か。つーか、ここに俺よりレベル低いヤツいねーのかよ!
せめて、あいつらが逃げ切るまで、楯になれれば良いな。あ、今あこがれてたセリフ言う場面かも!
「これより死地に入る!命の要らぬ者はかかって・・・って、コラ!最後まで言わせろ!」
襲いかかってきた20人くらいを槍で薙ぎ払うと、そいつらは崖から落ちていった。
思わず「あ、ごめん!」と言ったが、すごい勢いでレベルが上がってるんで、もうすでに・・・。
一瞬の油断だろうか、崖の方ばかりを見ていたせいだろうか、背中に剣を突き立てられた。「しまった!」と思った時にはもう遅い。・・・なのに、いつまでたっても痛くならないし、いつになっても死なない。俺を刺し殺したはずの男は、「わぁ!固くないのに、凄い弾力!」ってグルメレポートのような事を言っている。
ゲームでよく「レベルが違いすぎてダメージが与えられない」ってあるじゃん?あんな感じ。
でも俺が「9×16」だからレベル16で、相手はレベル18だよ?レベルは同じくらい、むしろ相手の方が高いくらいなのに何で相手の攻撃が通らないんだろ?
その時亮に天啓が走った。
「9×16」が掛け算だったらどうなるだろう?掛け算をした数字がレベルだとしたら・・・レベル16だと思ってたらレベル144だった。いや、まさか、でもレベル18の人の攻撃が通じなかった理由としては、辻褄が合う。
急に目の前にいる30人が、芝刈りの草に見えて来た。切ったり潰したりはスプラッターでまだ苦手だから、全員崖から落としちゃおう!
後に崖の下に通りかかった旅人は、落ちた吊り橋と落ちて死んだ兵士50人を目撃する。
「50人いっぺんに吊り橋を渡ろうとして落ちた間抜けな兵士達がいた」という笑い話がその地方で有名になるが、真相を知るものはいない。
ちなみに、亮は一行を追いかけようとするも吊り橋がなくなって道がなくなってしまった事で、崖の上で途方に暮れ、しばらくした後フテ寝する。フテ寝から目を醒ますと、元の世界の自分の部屋のベッドの上にいたという。
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