鮮烈! ダブルイー

 休みの日。雨。

 前日に起こったしぶいできごとを反省した二人。

 ライゾウとキヨカズは、普段着で島の地下にいた。

 部屋には、スミコとネネもいる。

「それで、トミイチのやつが、さ」

「ライゾウが悪いわ。ちゃんと謝ってよね」

 雑談していた。

 そのとき、上空に何かが現れたという知らせが届く。

 指令室しれいしつへ向かう一行。画面に地上の様子が映る。

 飛行機が変形した。そのあと、ゆっくりと下降していく。

 それは、丸みを帯びた白いロボットだった。


 道の真ん中に立つロボット。ダブルエスと似ていた。

 通信が入る。

『ダブルエスを渡して欲しいのですが』

 トミイチの声が聞こえた。

「冗談だろ?」

『この機体には、昔の戦闘記録せんとうきろくが残っている。意味が分かりますか?』

「分かるけど、こんなことって」

『負けを認めたほうが、いいですよ』

「機体の名前を、教えてほしいのじゃが」

 銀髪の少女は落ち着いていた。

『ダブルイー』

 正式な服を着た長めの髪の少年も、落ち着いていた。


「嘘だと言ってくれ」

「ダブルエスは渡せない。あなたにはね」

 外ハネヘアの少女が、きっぱりと言った。

『残念です』

「ダブルエス、出撃!」

 そこに、タカシとミツルがやってきた。

 続いて、フユとメバエとホノカも部屋に入る。

「どういうこと?」

「なんなんだよ」

 状況が理解できない同級生たちに、トミイチが伝える。

『分かりませんか? アースは私の組織そしきです』


「できれば、戦わずに止めたい」

「僕も」

「だから、あいつに話し続けててくれ」

 格納庫かくのうこへ向かう、ライゾウとキヨカズ。

 ダブルエスに乗り込み、スイッチ付きの棒を握りしめた。

 コックピットで通信を開く。

『私が忙しかったのは、スラブを倒すためです』

『トミイチが、前のボスだったなんて。ショック』

 ミドリの声が聞こえた。指令室しれいしつにいるらしい。

 ライゾウは何も言わなかった。

 い灰色のロボットは、地上へと上がっていく。

 球形で座席がないコックピット。

 通信を聞く二人は、くしていた。


 雨の中で対峙する、2機のロボット。

『渡す気になりましたか?』

「目的は、別のはず」

「どういうことだ? キヨカズ」

『奪うだけなら、ダブルエスが動かないうちにできた。ということじゃ』

 代わりにネネが答えた。

「そうだぜ。島に何度も来てるし、どうとでもできたはずだ」

 ライゾウの表情が、すこし明るくなった。

 息をはく音が聞こえる。

『昔話をしましょうか』

「なんだよ、急に」

『ダブルイーを動かしたのは、五年以上前のこと』

 雨は降り続いている。

 トミイチが思い出すさまざまな記憶を、ほかの人たちは知るすべもない。

『このままでは、世界を守れない。戦闘記録せんとうきろくから分かりました』

「なにか、脅威きょういがある?」

『そのためには、圧倒的な力で世界を変えるしかない』

 白いロボットが動き出した。

 関節は緑。黒い部分のある装甲そうこう。飾りは銀色。

『ダブルイーの力を引き出すために、その機体が必要、ということです』


 白いロボットが、い灰色のロボットに殴りかかった。

 ライゾウは反撃しない。キヨカズが言う。

「ダブルイーは、最初から一人乗り?」

『ええ。ひとりで問題ありません』

 言葉のあと、ダブルエスが肩のシーイーキャノンを使った。

 光るたまは空に消えていく。

「仕方ない。力ずくで止めてやるぜ」

 コックピットのライゾウは、右手を握りしめた。

 殴り掛かるダブルエス。

 ダブルイーはけない。薄い光が包み込み、衝撃を和らげた。

 コックピットは一つ。球形で座席がない。

 すこし平らな足元。きれいな姿勢で立っているトミイチは、笑っていた。

「シーイーブレードだ」

「いくぜ! 相棒あいぼう

 キヨカズとライゾウの目に力が入る。

 雨の中戦う、二体の巨人。

 その目に水が流れた。


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