第124話 作戦は成功?です1
「時間だ」
アデクは校舎の陰、副隊長の方に目を向ける。頷く副隊長。それを見たアデクはスッと息を吸って目を閉じる。そして、薄く目を開くと両手からその手に持った魔導具へと魔力を流して……
「……」
アデクの前方にある、爆薬の詰まった箱はうんともすんとも言わない。首をかしげて魔導具のチェックを始めるアデク。ダイヤルなどを順番に見ていくも、アデクは相変わらず怪訝そうな表情。そして、彼はもう一度魔力を流してみる。
「ん? 変な感じに魔力が返ってきてる?」
そう呟くアデクの元に駆け寄ってくる副隊長。
「どうした、アデク。」
「魔導具が壊れているかもしれません」
「それは本当か? 三十ミニ前の最終チェックでは何の問題もなかっただろ?」
「ええ。でも、俺じゃあ動かせないみたいなので、副隊長も確認してみてください」
「分かった」
そう言うとアデクから魔導具を受け取る副隊長。彼は魔導具側面のダイヤルを回して自分用に調整した。そして、グリップについている端子を握って魔力を流す。
「「……」」
やっぱり何も起きないことに対して押し黙る二人。風の吹き抜ける音が響きわたる中、先に口を開いたのは副隊長だった。
「まあ、とりあえず隊長のところに戻ろうか」
そして格技棟へと向かう二人。それを後ろから観察していた視線には気づかずに。
「んで、何もせずに戻ってきたのかお前ら」
第一修練場でアデクと副隊長に鋭い目を向ける隊長。他のメンバーはいまだに校舎内にいるため、三人以外は誰もいない。二人が気おされていると隊長は続ける。
「爆発が起こせないんだったら何か別の方法で騒ぎを起こして来いよ。と言いたいところだが――」
突然彼は言葉を切ると、にぃっと口の端を上げた。
「まあ、当初の計画とはかなり違ったが、釣れたみたいだぞ」
隊長が目で指示した部屋の入り口。二人が慌てて振り返るとそこには三人の人影。
「あれっ? こいつらどこかで……」
アデクの口からそんな言葉が漏れる。アデクの前にいる二人の少年もどこか不思議そうな表情だ。しかし、腰の棒を引き抜くのが遅れてしまったアデクに対し、目の前の二人は動きを止めていない。その差が致命的となり――
「馬鹿野郎。なにボーっとしてやがる」
ガスっと鈍い音が部屋に響く。アデクの前に飛び込んだのは隊長。彼は、少年のうち一人が打ち込んできた拳を受け止める。もう一人は副団長が抑えていた。隊長は受け止めた拳がその勢いから想像していたものより遥かに軽かったこと、それからなぜか残りの一人が攻めてこないことに首を捻る。
「すみません、隊長」
一歩遅れてアデクが復帰し彼らが反転攻勢に出ようとしたところで、残りの一人、銀髪の少女が手を叩いて言った。
「はい、みんなストップ。アレフとビートも引いて」
その言葉とともにその場から飛びのく少年二人。アデク達がそれを追撃しようとする。
「――っ」
その瞬間、場を襲う重圧。隊長は気づいたようだ。これが目の前の少女から放たれていることに。つい数セック前まで戦闘状態にあった修練場は静けさに包まれる。その静寂に少女の声が響いた。
「こっちにはあなたたちと戦う意思は無いわ。そっちがかかってくるようなら反撃するけど。私たちはなぜ校庭で爆発を起こそうとしていたのか聞ければそれでいいのよ」
そして、少女は隣にいる少年二人を睨む。
「アレフとビートは勝手に飛び出さない。話し合いがやりにくくなるじゃない。手加減はしていたみたいだからよかったものの……」
「すまん、見つかったと思ったらつい」
「同じく」
「二人とも、いつも言われてるじゃない。そんなのだから――」
二人に説教を始めた少女。その中で何回も出てきた名前、
「まさかお前ら、うちの村のアレフにビート、それにルーシェかっ?」
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