第113話 一日ぶりの学校です

「ルーシェちゃん、ミリアちゃん、また明日。」


「はい、またね。」


「……うん。」


日も沈む頃になり、みんなが帰っていく。


「またな。ディー。」


「おう。あっ、そういえば言い忘れてたがオスカー。またエスティア王国が変な動きを見せてるらしいぞ。気をつけろよ。ここは思っているより国境が近いんだから。」


「そうか。わかった、覚えておく。」


「俺も明日からまた公都に行く予定があるから同業とかに伝えておくよ。それじゃあな。」


「頼む、フリッツ。じゃあな。」


こうして皆が帰っていったのだった。




「はあ、静かだな。」


皆が帰った後のリビングは熱気が残っているのに物静かでどこが寂しい。片付けをする母を手伝ったあとソファーに体を預けていると妹が寄ってきた。


「おっ、どうしたんだフーシア?」


「よんで。」


そう言う妹は本を手渡してきた。

絵本かな?と思い表紙に目を落とすと、そのタイトルは

『効率的な魔法部隊運用方法』

だった。


「いやいやいや、別の本を持ってきなさい。」


なんでこんな本持ってきてるんだよ。というかどこから持ってきたんだ。


「えー。これ。」


妹が梃子でも動かないという姿勢を見せたので仕方なく読み聞かせを始める。

こんな内容の本聞いてても面白くないだろうにと思いながらも聞かせていると、案の定妹は途中で寝てしまった。母に似たその射干玉ぬばたまの髪を撫でてから、その体を抱える。そしてベッドまで運んでやった。そのあどけない寝顔に「おやすみ。」と声をかけたのだった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ふぁああー」


「おはよう、アヤト。眠たそうだな。」


「ん。アレフ達か。おはよう。」


「おはよう。アヤト、ギームがうつってるんじゃないのか。」


「ビート、それはない。僕の予防策は完璧だ。」


「……zzz。んー、こらーみんな僕を菌みたいに扱ってーー……むにゃむにゃ。」


「それで結局なんでそんななんだ?」


「昨日妹に渡された本に夢中になっちゃってて。」


「へぇ、どんな本?」


「これ。」


そう言って、僕はカバンから魔法部隊についての本を取り出す。


「おいおい、持ってきたのかよ。なになに……?なんて読むんだ?この題名。」


「『こうりつてきなまほうぶたいうんようほうほう』だな。って魔法部隊運用?アヤト、将来騎士団に入るつもりなのか?それも、魔法部隊の第二師団に。」


「うーん、そこまでは考えてないけどっていうか魔力がないっていう僕が入れるかはわかんないけど、内容が面白いから読んでただけ――」


ガラッ。

そのタイミングで扉を開けて教室に入ってきたのはアデクだった。

彼はこちらをしばらく見たが、そのあと何も言わずに顔を背けて自分の席に向かった。

どうしたんだろう?嫌味の一つでも言ってくると思ったのだが。


「アヤト、アデクのこと何か知ってるか?」


「何のこと?アレフ。」


「アデクが昨日から不気味なほどおとなしいんだよ。」


「あ……うん。それ……ごめん、分からない。」


多分一昨日の事件のせいだろうけど、でもどういう心境でそうなっているのかは分からないからな。

ごめん、本当のことを言うわけにはいかないから、嘘とは言えないことで誤魔化します。

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